メルカリは上場してからどう変わったのか 小泉文明社長ロングインタビュー
小林:ただ、メルカリは「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」というミッションを掲げていますよね。それだけ幅広い展開を念頭に置きながらも、ミッションの中にマーケットプレイスという言葉が明記されていることが気になります。あくまで事業領域はその中にとどめて、ゲームとかプロ野球チームの運営とかいったところまで限りなく広げていくつもりはないという意味合いなのでしょうか?
小泉:ミッションが抽象的で何をやりたい会社なのかがボンヤリしてしまうケースもよく見受けられますが、メルカリでは最初はちゃんとフォーカスしようと思って意図的に狭めるように表現しました。だけど、中長期的にはマーケットプレイスにこだわる必要はないし、メルペイはメルペイでメルカリとは違うミッションを掲げています。それに、日本国内に限ればすでにマーケットプレイスを創ることを達成できていると言えるでしょうが、グローバルに見ればまだ道半ばです。ミッションの達成というのはかなり先かなと思っています。
ユーザーにまで広く知れ渡るメルカリの3つのバリュー
小林:Go Bold(大胆にやろう)、All for One (全ては成功のために)、Be Professional (プロフェッショナルであれ)というバリューについては、メルカリもメルペイも共通しているのでしょうか?
小泉:まったく同じですよ。ただ、メルペイについても、進んでいるステージに応じて、変えたり追加したりする可能性も出てくるでしょうね。
小林:海外でもバリューは同じですか? だとしたら、外国人にもすんなりと理解してもらえるものなのでしょうか?
小泉:同じですよ。特に彼らはGo Boldというフレーズが大好きですね。
小林:Go Boldだけでなく、3つともめちゃくちゃ覚えやすいフレーズですよね。
小泉:これはテクニック論なのですが、なるべく英語の短い表現にするのがコツです。ただし、異なったニュアンスで受け止められる恐れもあるので、日本語でも捕捉しています。
小林:この3つのバリューは小泉さんが入社して間もない頃に作られていますよね。その頃のメルカリはどの程度の規模だったんですか?
小泉:まだ10人ぐらいでしたね。
小林:その段階でこうしたバリューを定めたことがメルカリにとって最初の転機になったのかもしれませんね。たいていのスタートアップは、事業が急成長している局面ではそちらのほうに夢中で、バリューのことにまで頭が回りませんよ。DeNAにしても、バリューを策定したのは従業員が400人になってからですよ。そこまでの規模になってくると、社内にちゃんと浸透させるのも一苦労です。それに、社員の多様性も進んで、バリューをどこに合わせていけばいいのかもわからなくなります。小泉さんが策定することを提案した際に、まだ時期尚早ではないかという声は社内から出てこなかったのですか?
小泉:いえ。特になかったですね。一気通貫で進んでいき、人事評価や採用基準においても3つのバリューが紐付けられていきました。
小林:採用と言えば、まだ入社が決まっているわけではない人までもがメルカリのバリューを知っていることがスゴイですよね。それだけ、外向けの発信力も強いということでしょう。就職先を調べているプロセスで初めて知るよりも、知っているからこそ応募するというケースのほうが多い気がします。