28年隅田川沿いに暮らすホームレスの生活 路上で暮らす男女5人それぞれの経緯と思い
しかし、状況はだんだん厳しくなってきた感じがするという。
「スカイツリーが完成する少し前からテントは禁止になったし、居づらくなってきた。五輪のときは海外の観光客も押し寄せるだろうから、一種の“目隠し”で追い出されるんじゃないかと心配だよね」
そんな平賀さんは2年後、どうするつもりなのか。
「沖縄で暮らしていたいね。温暖で、食べ物もうまいみたいだから」
と目を輝かせていた。
朝5時に起床して食事後はゴミ拾い
スカイツリーに背を向け、五輪開催時に観戦客や買い物客でごった返しそうなスポットへ。JR東京駅丸の内口から少し歩くと、環境省皇居外苑が広がる。
「5年前はここに30人ほどホームレスがいましたが、いまは10数人ぐらい。ただ、テントは禁止だし、夜は公園には入れないので、日中、芝生やベンチで休むことしかできませんけどね」
と公園関係者が事情を説明する。
この公園の木陰で芝生の上に横たわっていたのが、山上浩さん(69・仮名)だった。
「長野県生まれで、中卒で主にガテン系の仕事をしていたんだけれど、15年前からプータローですよ。他人ならまだしも兄、姉、弟からこき使われ、金もふんだくられ、裏切られた結果、何もかも嫌になってしまった。人を信じられなくなったことが原因です」
と山上さんは振り返る。縁がなかったため、ずっと独身という。
「寝泊まりは近くの都立日比谷公園の屋根があるところ。朝5時に起きて、水道で顔を洗い、髭と髪を剃って、食事。それからこの皇居外苑へやってきて1~2時間はゴミ拾い。40代でエコノミー症候群になったから運動のためにね」
途中で食事を挟み、芝生で横になって夕方までいる。
「睡眠不足だし、金がないからやることもないのでね。何がつらいって、やっぱり夏の暑さですよ。寒いのは着ればいいけど、暑いのはこれ以上脱げないから」
と山上さんは素肌を指さして笑う。涼める図書館などへは行かない。じっとしていると眠くなり、眠ると職員から注意されるから。