iPhone XRが廉価版じゃなく「本命」なワケ アップル幹部のフィル・シラー氏に直撃!
「確かに、iPhone XSは最上位モデルであり、最高の体験を届けることを目指しています。しかし、iPhone XRが安いから劣るというわけではありません。実際iMacは登場以来、世界で最高のコンピュータですが、ラインナップの中でつねに最も高額のMacではありませんでした。iPod nanoもそうです。最高の音楽プレーヤーが、最上位機種ではなかったのです。
選択肢が限られ、価格の制約もあるのが常です。そうした中でこそ、製品はより磨かれていき、多くの人々に受け入れられてきた、それがアップルの歴史なのです」
1つのカメラによるメリットも
シラー氏も認めるとおり、価格を抑えるため、さまざまな工夫を凝らしているのがiPhone XRだ。その最もわかりやすい点がディスプレーだが、1つしかないカメラも見てすぐわかるコストカットの結果と言える。
しかし、これによってメリットが生まれているという、興味深い話があった。
「iPhone XRには、光学的な望遠レンズを備えていない、26mm/f1.8(35mm換算)のカメラを1つ搭載しました。これまでポートレートモードは、2つのカメラで被写体を認識していましたが、iPhone XRでは1つのカメラと機械学習のアシストで被写体を切り出し、背景をぼかしています。
ここで、iPhone XSより優れている点が生まれます。結果的にはiPhone XRの利点としては明かりが少ないところでポートレート撮影をするとき、iPhone XR のレンズのほうが光を取り込むことがよりできる、ということになるのです」(フィラー氏)
確かに、iPhone 7 Plus以来、望遠レンズはf2.4で、決して暗くはないが、夜のポートレートモードを撮ろうとすら思わなかった。被写体が暗すぎてうまく撮影できなかったからだ。しかしiPhone XRでは、明るいワイドカメラでそのままポートレート撮影ができる。友人とポートレート撮影を楽しむ若者にとっては、むしろiPhone XRのほうが優れた性能を発揮するのだ。カメラごと、メーカーごとに、得手・不得手がある。これと同じで、より迫力のあるポートレートならiPhone XS、ローライトのポートレートならiPhone XRという選択肢を与えているのだ。
「一眼レフカメラに限らず、すばらしいカメラはそれぞれのスタイルを持っています。良い悪いではなく、“カメラの個性”なのです」(フィラー氏)
iPhone XRは廉価版でありながら、昨年のモデルが存在していたiPhone XS以上に丁寧にくみ上げられている。シラー氏がiMacやiPod miniを挙げたように、廉価版だからただコストダウンをするのではなく、そうした制約を個性へと昇華させ、より多くの人々に受け入れてもらう「飛躍」を狙う戦略的な製品であることがわかった。
そのうえで、シラー氏はアップルが設定するスマートフォンの高いスタンダードに触れてほしいと語る。
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