今の金融市場は1990年代後半に似ている GCIの山内英貴CEOに暴落への備えを聞く

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山内 英貴(やまうち ひでき)/GCIアセット・マネジメントCEO。1963年生まれ。日本興業銀行でトレーディング・デリバティブ関連業務に従事した後、2000年4月に独立し、ヘッジファンド運用に特化した資産運用会社グローバル・サイバー・インベストメント(現GCIアセット・マネジメント)設立。2007年4月より東京大学経済学部非常勤講師。主な著訳書に『LTCM伝説』(共訳:東洋経済新報社、2001年)『オルタナティブ投資入門(第3版)』(東洋経済新報社、2013年)『エンダウメント投資戦略』(2015年、東洋経済新報社)がある。

日本の投資家が円を持っていて国内株、国内債券、外国株、外国債券に資産を4等分にして投資した場合のシミュレーションではどうか。2001年1月末~2012年10月末はシャープレシオが0.03だったが、2012年12月以降、アベノミクス開始後は円安が進み、シャープレシオが1.43に上昇している。こうしたバランス型のファンドでシャープレシオが通常1を超えることはありえない。

流動性相場は行きつくところまできた。イールドカーブはフラット化(長短金利差が縮小)して、クレジットスプレッド(信用リスクに応じた利ザヤ)も潰れてしまった。

さらに、流動性の低いプライベートエクイティや実物資産、CAT債(自然災害のリスクを取る債券)などにもお金が流れて、理屈上は存在するはずの流動性プレミアム(現金化にコストがかかることに応じた超過収益)も消失してしまった。

運用担当者は何とかリターンを上げなければならず、血眼になって投資先を探しているので、2017年には仕組債などを通じて株式市場のボラティリティ(変動率)も売られて、オプションの売りによって、オプションのプレミアムをキャリーとして取ることまで行われた。今年の2月には長期金利の上昇によって、こうしたポジションに調整が入り、一時的にボラティリティが高まったが、その後、また同様の投資が復活している。待機資金は山ほどあるからだ。ありとあらゆるリターンの源泉は食い潰された。

巻き戻しの途中ではアメリカに資金が集中する

政府と中央銀行が経済拡張のために結託することは、かつてはやってはいけないこととされていた。インフレの高進やバブルの崩壊などの形で大きなしっぺ返しが来るという過去の経験から、中央銀行の独立性が確立されてきた。

しかし、リーマンショック後は大きな落ち込みから、なんとか、景気を支えて、金融システムを安定化し、委縮していた民間企業や投資家にリスクを取ることを促そうという方向で政策目標が一致した。日本では日本銀行が国債のみならず株まで購入しているが、かつて、ここまで政府と同じ方向を目指したことはなかった。

だが、すでにFRB(米国連邦準備制度理事会)が利上げを着々と実施して、正常化に向かっており、そのインパクトは大きい。ECB(欧州中央銀行)も続いて出口に進んでいる。日本銀行もいつまでも日本株を買い続けてニッポン株式会社の大株主としてどんどん大きくなるというわけにはいかない。FRBもクラッシュを起こさないように慎重に進めると思うが、さまざまな市場に歪み(ゆがみ)が生じているので、今年の2月や今月のような動揺は起きやすくなっている。

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