今の金融市場は1990年代後半に似ている GCIの山内英貴CEOに暴落への備えを聞く

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――何度か調整がありましたが、危機はいつ来るのでしょうか。

政策当局も、さまざまに手を打つので、そればかりはわからない。また、バブルが大きいほどはじけるのに時間がかかる。リーマンショックの時にもサブプライム住宅ローンの専門会社が潰れ始めたのは2006年の暮れで、2007年3月のベアスターンズ、8月のパリバショック、2008年9月のリーマンショックまで2年近くかかっている。

現在は、「実体経済は絶好調で、インフレにもならないし、企業業績も好調である。それを牽引しているのはデジタル革命で、世の中が大きく変わる産業革命のようなイノベーションが起きているから、株は上がるのだ」という説明がよくなされている。

しかし、バブルが醸成されるときには、いつもそういうストーリーが語られる。むしろ実体経済は後からついてくる。企業業績が悪くなってきたから株が売られるのではなく、市場が先に動いて、実体経済が減速し、企業のマインドや消費活動が後退していく。マーケットは実体経済の先行指標であると思う。

大きな調整局面で売らされてはならない

――個人投資家へのアドバイスをお願いします。

過大なリスクにならないように注意してほしい、というしかない。来るべき調整局面に向けて、伝統資産のロングオンリーではなく、ショートポジション、カラ売りを使うなどだ。オプションを使って保険を購入しておく手法もあるが、しばらくはコストばかりかかるので、難しい。

個人投資家の方にお勧めしたいのは、パッシブ運用だけだと、一気に皆が売る、調整局面で大きなドローダウン(最大資産からの下落率)が来る可能性があるので、現在のポジションを見直すこと。ここまで持ってこられた方は、利が乗っていると思うので、一部は利食い、リスクを減らしておくことも選択肢だ。

長期資産形成でいちばんのNGは売ってはいけないときに、売らされることだ。リスクシナリオが顕在化したときに、耐えられなくなってその時点で売るのは最悪。我慢できれば、リバウンドは必ず来るのに、リスクに耐えきれず売ってしまうと試合終了だ。変な商品を買わされていない限り、納得して買ったものは厳しい局面でも持ち続けること、ドン底で売らされないことが大切だ。

株が半分になるともっと下がるのではないかと不安になる。しかし、そこで頑張れるように、いまのうちから、ポジションを見直しておきたい。20%下げると辛いのであれば、期待リスクを10%に抑えておくとかして、底値で売らされないようにしたい。できれば買いに出られるような余裕を持つと、なおよい。リスク許容度はそれぞれの投資家によって千差万別なので、自分に合う水準を考えてほしい。

最後に、数字のマジックには注意したい。株価が50%下げた場合、元に戻るには50%ではなくて100%上昇しなければならない。たとえば100万円のものが50万円になったら、50%上げても75万にしかならず、取り返すには株価が100%上昇しなければならない。大きなドローダウンはダメージが大きいということを念頭に、株の比率が大きすぎると感じる場合は、ほかの資産などに分散しておきたい。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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