「米中貿易戦争」長期化を覚悟の習近平の狙い 対外的に11月以降どういう動きを見せるのか
「『覇権』という言葉は使わないでもらえないか」――。
9月、講演のために招聘された著名な中国政府系シンクタンク側から、筆者は事前にそう念押しされた。筆者が講演のテーマとして提示していたのは、中国語では『全球話語権競争』である。直訳すれば「グローバルな発言権をめぐる競争」となろうか。
実質的テーマは、「米中貿易戦争の本質は、構造的な覇権争い」ということだ。
この講演時の中国側研究者との意見交換は、貿易戦争を仕掛けた米国に対する中国側の対応についてが主軸となり、政府幹部への聞き取りは、習近平政権の対応の是非が主体となった。
本稿は、北京の中国共産党筋とのこうしたやりとりを含め、中国側が披露した認識を抜粋し構成してみたい。
「自主開発」を政権の求心力に
講演では、「戦争」という言葉も「摩擦」に代えるよう注文されたが、「覇権」も「戦争」も活発な議論のなかで次第にお構いなしとなった。
米中貿易戦争の本質は、ドナルド・トランプ米大統領がさきの国連演説で「技術移転の強要、知的財産の略奪」と指摘したように、中国のデジタル覇権、ハイテク覇権の阻止にある。
中国側は、技術覇権と軍事覇権は表裏一体であり、貿易戦争の本質は安全保障だという点を明確に認識している。言葉にしなくても、大国の興隆をかけた覇権争いととらえるべきとの考えに反論はない。
中国のハイテク育成政策「中国製造2025」は10の分野を掲げ、ハイテク超大国を目指すものであり、邁進している。今世紀半ばには軍事で米国と並ぶ強国となることも、習近平中国国家主席は実現可能な目標、見通しとして掲げている。
「中国製造2025」には、基盤技術産業の国産市場シェアの目標が書かれており、これをそのまま推進されると、中国市場と第三国の市場で外資が大きな影響を受けることになると日米欧は批判している。
技術移転強要、海外の技術買収への国家的介入だけでなく、中国企業への補助金、中国企業から材料を調達するよう求める姿勢、政府支援による生産能力過剰問題など、こうした一連の中国の手法を問題視してきた。