「米中貿易戦争」長期化を覚悟の習近平の狙い 対外的に11月以降どういう動きを見せるのか

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そうした一方で、中国政府は9月24日、米中貿易摩擦に関する対外的な公式見解を発表した。要点は、「政府は外資に技術移転は強制しておらず、企業間のビジネス上の行為を強制というのは事実の歪曲である」というものだ。公式に反論することで、米国に折れない姿勢を国際的にも強調した形だ。

これらの流れを見ている限りにおいては、対中貿易で利益は上げたいものの、中国の強大化する軍事力やいわゆる「戦狼式外交」に対する不信という西側諸国に横たわる対中認識を、ここにきてようやく一定程度分析し、理解しはじめているように見える。

しかし、かと言って大幅な対米譲歩をしないのは、国内で政権への批判が生じ、習近平主席への個人批判に直結することを恐れているからだ。

経済を皮切りに政治、軍事へと国際的影響力を高めるための「一帯一路」戦略、米国と並ぶ覇権を視野に入れた「中国製造2025」政策は、習近平政権にとって是が非でも成功に導かなくてはならない国家戦略であり、その修正は、政権基盤そのものを揺るがすことにもなりかねない。だからこそ、修正は今後もあり得ないだろう。

一方で、米中貿易戦争を勝ち抜くべく着々と「備え」の施策も進めている。

国内経済、特に雇用に影響が出ることを大きな問題ととらえ、さまざまな雇用対策を各地方などにも研究させまとめている。すでに構造改革を後回しにし、財政投資を重視することも決定した。地方政府は自国企業に対し、雇用を維持せよと通知徹底している。

今回、中国側が筆者に強調したのは、貿易戦争で損失は受けるが、世界最大の巨大市場がある限り、マイナス成長にはならないだろうとの認識だ。

技術移転に対する批判は今後、米国以外の先進国からも厳しくなることは予想しているため、企業・大学向けの研究開発費の増加と、これまで以上の人材の引き抜きに力を入れる方向だ。

「創新技術」を図り、成長軌道に乗せれば、「中華民族の偉大な復興」は成し遂げられるとの考えは不変なのである。

「問題は時間だけ」

米中貿易戦争における現在までの対抗具合から、現状では中国が不利であると分析する国内外の論者が多く、中国側もそれを認める。

だが、たとえばボーイングなど航空機の購入キャンセル、アップル社のスマートフォンや米国製自動車、農産品の中国市場からの排除、中国側の損害が出ることを承知のうえでの米国債の売却、米政府・企業・個人に対する個別的報復措置など、さまざまな対抗策が可能であることも強調した。

「創新技術」についても、いくら国際的な批判が高まったとしても、「今後も最先端技術は手に入れられる。問題は時間だけだ」(技術革新を担当する地方政府幹部)という自信を隠さない。その根拠は明確に示さなかったが、これまでの手段を巧妙化させるということなのだろう。

ちなみに、中国が、そして習近平主席があくまでも「自力更生」に、しかもとりわけ軍事面においてこだわり続ける点に留意しておく必要がある。固執する原点は、原爆開発で旧ソ連からの技術支援が得られなかったことに始まり、1996年の台湾海峡危機があると思われる。

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