「米中貿易戦争」長期化を覚悟の習近平の狙い 対外的に11月以降どういう動きを見せるのか
とりわけ、米国の危機感は強く、米国の標的が「中国製造2025」であることは明らかである。ただ、トランプ大統領自身の認識がどこまであるのかは不明ではある。
当初中国側は、米国の対中制裁はトランプ大統領の政治パフォーマンスであり、米国の貿易赤字問題については、中国側の米製品の巨額購入で手打ちできると考えていたという。
では、米国側の危機感、覇権を渡さないという認識を、中国側はどこまで理解していたのか。筆者のこの問いに、中国共産党幹部はこう答えた。
「従来の米政権の政策を出すまでの手順はわかっていたが、トランプ大統領の出現によって不規則となった。ホワイトハウス内の情報も薄くなった。さらに問題だったのは、米国で対中穏健派までもが対中強硬派に変わったことへの認識と対策が遅かったことだ。
ホワイトハウスだけでなく、政府や研究者レベルにいたるまでその状況が拡大しているとの分析が、(党中央に)正確に上がっていなかった。トランプ大統領の中国叩きを喜ぶ西側の空気感についての分析も不足していた」
争いの長期化を予想
仮に米中が一時休戦しても、再び異なる角度で米国は問題を提起し、争いは長期化するのではないか。米政権では、米国側に痛みがあっても中国側に損失があるまで闘いは続くとの認識もあるようだが、と続けて問うと、
「今のトランプ政権では、確かに中国とのウィンウィンの関係や中国という巨大市場、そこから得られる利益を失っても、ハイテク分野や軍事面で優位性を失うリスクの方が大きいとの考えが広まりつつあるようだ。米国の対中強硬派に対する我々の側の情報収集と分析が甘かったのも確か。
対中穏健派からの情報に耳が傾きがちだったのだ。問題は長期化するだろう。しかし、『中国製造2025』を修正、撤回することはない。貿易赤字問題で譲歩しても、トランプ政権は人民元の問題や知的財産の問題を大きくするかもしれない。人権問題や他の問題を持ち出すこともあり得る」
中国側の予想通り、マイク・ペンス米副大統領は10月4日、中国に関する演説で、中国の「略奪的」な経済慣行だけでなく、中国に有利な融資システムによる他国への圧迫や、中国の治安当局による「米国技術の大規模な窃盗」を批判した。
さらに、米国に対する攻撃的な軍事姿勢や日本の尖閣諸島に対する監視活動、トランプ大統領の再選を阻もうとする試み、宗教的少数派(新疆ウイグル自治区でのウイグル族)に対する弾圧など、幅広く中国批判を展開した。トランプ政権はこうした問題もクローズアップさせてくると考えられる。