生意気すぎる部下を掌握する社内政治のキモ 正面を切って戦い続けるのは不毛なやり方だ
あるとき、坂本に作成を指示した提案書をチェックし、問題箇所の修正を命じました。
「坂本、この『貴方の営業ご担当者様が販売活動をしやすいように工夫しています』という表現は、意味不明じゃないか。意味がわからないから先方へのアピールになってないと思う。ここは、具体的な事例を使って修正すべきだ」
「いや、ここはこれでいいんですよ。この文章はあえて抽象的でいいんです。いろいろ、イメージを膨らませてもらう効果を狙っています」
「ダメだよ。それでは適当な提案と思われてしまう。もっと、訴求力を持たせなきゃ。それには、具体的に書いたほうがいい」
「なんで、そう言い切れるんですか? 絶対に正しいと言えるんですか。なら、修正しますけど」
「そういう問題じゃないだろ。君が自主的に変えなきゃ意味ないだろ。納得して変えなきゃ、何もならないだろ」
「自分的には、これでいいと思うんですよ。でも、修正しろというなら、修正しますよ。私は、部下ですしね」
「嫌な言い方だな。まあ、わかった。じゃあいいよ。もう言わない。俺はチェックしないから、次長と部長に見せてきなさい」
「そうですか。じゃ、そうさせてもらいます」
坂本は、いつもこんな感じでした。彼の場合は、厳しく言えば言うほど反抗し、言うことを聞かないタイプなので、反抗させない工夫をしなくてはならないと思いました。
あまり使いたくはなかったのですが、今のままではチーム全体に悪影響が及ぶので、私は「ある仕掛け」を施しました。私の言うことを聞かなかった坂本を、次長と部長のところに行かせ、私はあえて、その場には同席しませんでした。
ギリギリ? パワハラ未満の部下の追い込み方
その後の顚末です。
夕方、会議から戻ってきた私は、自席でうなだれている坂本を見ました。近づいていくと彼は私を見上げました。
「どうした坂本、次長、部長はOKか?」
「次長も部長も『こんなのわからん』と怒ってしまいました。『もうお前の話は聞かない』と言われました」
「そうなの、なんて言われた?」
「2人とも芦屋さんと同じことを言っていました」
「思うところは同じなんだね。それで、修正して説明したの?」
「何回持っていってもOKが出ないんです」
「そうか、大変だな」
「最後には、芦屋がOKを出さないと見ないと言われました」
「ふーん。でも、君は僕の言うことは聞かないじゃん。言うこと聞けないヤツに指導する気はないよ」
「いや、そう言わずに……お願いしたいのですが」
「勘弁してよ」
「すみませんでした」
「わかったよ。うまくいくかわからないけど修正してみようか。それで、2人で次長と部長に説明しよう」
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