死亡事故が起こりにくい保育園の「見極め方」 質の高い保育を行う園は何をしているのか
保育施設で死亡事故がまた起こってしまった。とても、悲しいことだ。問題の背景には「保育の質」の低さがあると考えられる。これを教訓に保育園には改めて安全管理を徹底してもらう必要があるだろう。だが、根本的な解決策を見出すには、保育の質を根本から問い直さなければならない。
そもそも、現在の保育現場では、保育士が一人ひとりの子どもに手厚くかかわれる体制が確立されていない。埼玉県上尾市の保育所での死亡事故の取材をまとめたルポ『死を招いた保育』(猪熊弘子著、2011年)の中でも、その問題が指摘されている。
保育の質が低ければ、本質的な問題は解決されない。では、保育の質とは何か。OECD(経済協力開発機構)は、保育の質について、「プロセスの質」「構造の質」「実施運営の質」「成果の質」「志向性の質」「教育の概念と実践」という6つの視点でとらえられるとしている。
それは多元的で、一元的に説明できないものの、ここでは筆者が園での保育において重要と考える「プロセスの質」「構造の質」「実施運営の質」に絞って解説したい。
大切なのは手厚い保育を保障すること
まずは、「プロセスの質」を取り上げたい。これは、日々の保育士と子どもたち、子どもたち同士、保育士同士の関係性を指す。関係性の良好さこそ、保育には重要なのである。
質の高い保育を実践する園は、朝泣いて登園してきた子どもに対しても、手厚い対応をしている。その子どもが泣きたい気持ちに寄り添い、ずっと抱っこすることもある。こうして保育士が手厚くかかわることで、子どもは安心して遊び始められる。
このように手厚い保育が保障されている園では、「〇〇ちゃんが、朝ぐずることが多い原因はなぜか」「〇〇ちゃんのかみつきが多くなる原因は何か」と記録を書いて振り返ったり同僚と話したりするほか、保護者の悩みにも気軽に応じるなど、常日頃からきめ細かく省察し、対応している。
つまり、保育の質が高い園では、一人ひとりにしっかり応じるための振り返りの時間や、同僚との話し合いや保護者との連携が保障されている。だから、保育士はイライラせず、子どもに丁寧に向き合えるのだ。逆に言えば、こうした対応をとっていない園は、保育の質が高いとは言えない。
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