高速道路で見る自治体イラストの深い味わい 知ると楽しい「カントリーサイン」の読み方

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一方、上信越自動車道の富岡市のイラストは、下り車線は世界遺産の富岡製糸場だが、上り車線は富岡市と合併する前の妙義町を代表する妙義神社のイラストと上下で異なっており、今年10月に確認した際にもまだ上下別のままだった。

北陸自動車道には、天女伝説で知られる余呉湖のイラストが描かれたカントリーサインが見られるが自治体の表示は「長浜市余呉」である。2010年に長浜市に編入された余呉町当時のものが、自治体名だけ変えて使われ続けている。

東京から300km走ってきたことを実感できる(筆者撮影)

カントリーサインは市町村境だけでなく、都道府県境にもある。本州と九州を結ぶ関門自動車道には山口県と福岡県の県境があるが、関門海峡に浮かぶ巌流島で戦った佐々木小次郎の燕返しをあしらったカントリーサインは路肩ではなく、関門橋の上部に設置されている。

また、高速道路の起点から100km、200kmなどのきりのいいところにも設置されていて、その表示を見つけるとはるばる走ってきたことを実感できる。また、名山が近づくとその山の名を示すサインも所々に設置されていて、旅の気分を盛り上げてくれる。ただ、残念なことに草や樹木が伸びて半ば隠れてしまっていたり色あせて何のイラストだか判別しづらいまま放置されているものもあり、早めに見やすくしてほしいと思うこともある。

(左)名山が近づくとその山の名前を示すサインも見られる(右)自治体名だけ変えて使われ続けている(筆者撮影)

ドイツは観光旅行に実用的なサイン

海外では、これまで走ってきた30余りの国では自治体の境界にきっちりと置かれた標識は見かけていないが、ドイツなどでは次のICで降りるとたどり着ける観光地や都市のイラストがかなり大きく掲げられていて、観光旅行の際には実用的なサインとなっている。

ドイツのアウトバーンで見かけた、旧市街地は世界遺産に登録されている、ハンザ都市リューベックのカントリーサイン(筆者撮影)

運転に欠かせない安全情報ほど重要ではないかもしれないが、高速ドライブのささやかな癒やしになってくれている標識。渋滞でノロノロ運転のときほど、ほっとさせてくれるので、いつまでも残しておいてほしいと思う。

佐滝 剛弘 城西国際大学教授

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さたき よしひろ / Yoshihiro Sataki

1960年愛知県生まれ。東京大学教養学部教養学科(人文地理)卒業。NHK勤務を経て、NPO産業観光学習館専務理事、京都光華女子大学キャリア形成学部教授、リベラルアーツ・ジャーナリスト。『旅する前の「世界遺産」』(文春新書)、『郵便局を訪ねて1万局』(光文社新書)、『日本のシルクロード――富岡製糸場と絹産業遺産群』(中公新書ラクレ)など。2019年7月に『観光公害』(祥伝社新書)を上梓。

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