米中間選挙、押さえておくべき「4シナリオ」 トランプ大統領が弾劾される可能性は?

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しかし、2018年の春には、アメリカ側の忍耐力も限界が近くなり、トランプ大統領と安倍首相は4月17・18日に会談。アメリカのロバート・ライトハイザー通商代表部代表と茂木敏充経済財政政策担当大臣により行われた貿易交渉の「FFR(自由、公正かつ相互利益)」という新しい枠組みに合意した。

さらに、9月26日にニューヨークで会談後、アメリカと日本は共同宣言を発表した。ここで安倍首相は、新たな話し合いはFTA(自由貿易協定)につながらないことを強調。日本政府は、アメリカにTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への再度の参加を求めており、2国間ではなく、多国間での協定を望んでいるからだ。

民主党「勝利」なら外交政策は手薄に

安倍首相はまた、この交渉は物品(TAG)のみに限定する貿易協定であるとしたほか、交渉においてアメリカは、「過去の経済連携協定」で合意した以上のことを求めないと説明した。さらに、交渉中は1962年通商拡大法の232項によりアメリカが日本車輸入に対して関税をかけないことも強調した。

一方、ペンス副大統領はこれとは“異なる"主張をしている。10月4日に行った演説では、「われわれは2国間を基軸とする、新たな貿易協定を推し進めている。間もなく日本と歴史的な自由貿易協定の交渉を始める」と強調した。また、前述の共同声明では、「アメリカと日本は交渉に入る。商品に関する日米貿易協定、およびサービスを含むその他の重要分野に対する交渉である」としている。

また、同じく4日、ソニー・パーデュー農務長官は、「正直なところ、われわれは欧州連合(EU)よりも日本のいい同盟国だ。そして農業に関しては、EUに対しての協定よりもよい条件を期待している」と発言。ライトハイザー通商代表も、農業輸入品に対する関税を一方的に大幅削減するよう繰り返し求めている。共同声明は、「日米は、本協議中はこの共同声明の精神に反する対策は講じないこと」と規定しているが、「対策」と「精神」の意味は定義されていない。

筆者は、民主党、共和党どちらの通商専門家からも話を聞いている。しかし、現時点では誰も、仮に共和党が下院で負けた場合、日本に対する貿易政策が変わるかどうかを見通せていない。

1つ明らかなのは、上院か下院、あるいは両院でその勢いを失うなら、議会がトランプ政権の政策を牽制するため、政権は国内政策対応で手いっぱいになり、外交政策にまで手が回らなくなる可能性が高い。この中間選挙は、アメリカ国内外に大きな影響を与えるだけでなく、2020年のアメリカの大統領選においても重大な意味を持つことは明らかである。

グレン・S・フクシマ 米国先端政策研究所(CAP) 上級研究員

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Glen S. Fukushima

ワシントンD.C.のシンクタンク「米国先端政策研究所(CAP)」の上級研究員。カリフォルニア州出身で、アメリカ合衆国通商代表部で対日と対中を担当する代表補代理や在日米国商工会議所の会頭を務めた経歴を持つ。また、ハーバード大学の大学院生のときには、エドウィン・ライシャワー教授、エズラ・ヴォーゲル教授、デイヴィッド・リースマン教授の助手を務めた。

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