「年金分割」熟年離婚は99%やめたほうがいい 「嫌な夫」でも「仮面夫婦」のほうがまだマシだ

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そもそも分割できる年金は、「厚生年金」だけです。仮に、会社員だった夫が将来受け取る年金が毎月20万円だとしても、そこに含まれる国民年金の部分は差し引かれることになります。20万円をそのまま分けるわけではないのです。しかも、分割されるのは、あくまでも「婚姻期間中の記録」に対応する部分のみ。「夫が30歳のときに結婚し、55歳で離婚」というケースでは、30~55歳までの25年の間に納めた保険料から得られる厚生年金だけが対象です。結婚前、離婚後に保険料を納めた分は分割の対象ではないのです。年金の分割とは、「婚姻期間中に納めた厚生年金の保険料の分を夫婦で分ける」のが、正解なのです。

分割する割合は最大2分の1までの範囲で、夫婦の話し合いによって決めていきます(合意できない場合は、家庭裁判所へ審判または調停の申し立てをすることになります)。ただし、妻が専業主婦(第3号被保険者)の場合、2008年4月1日以降の記録分については、合意なく分割でき、割合は一律で2分の1と決められています。夫からみると、問答無用で半分をもっていかれる、ということになります。

ちなみに、自営業者など、国民年金しか加入していない人では、年金分割はありません。また、共働きの場合、婚姻期間中の2人の厚生年金を分けることになり、給料が多かったほうが相手に分ける形になります。性別は関係なく、もし妻のほうが高収入なら「妻の年金の一部」が夫に分けられるのです。

妻に分割されるのは多くても数万円?

このように、夫の年金の半分をもらえると勘違いしている人が多いのですが、実際のところ、期待しているほどの額にはならないのです。たとえば、婚姻期間が25年、その期間の平均標準報酬月額が36万円だった場合、婚姻期間分の厚生年金は年間76万9500円。分割で妻が受け取れる年金は年額約38万円、月額3万円強です。妻自身の年金(国民年金)が約5万円とすると、年金収入は8万円程度で、老後の生活費としてはかなり心もとないといえます。妻自身の資産や、財産分与があったとしても、長生きするほどに不安が増すような金額です。

夫から見ても、老後資金のベースである年金が数万円減るのはダメージが大きく、夫婦ともに「離婚貧乏」まっしぐら、というのが現実なのです。

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