「年金分割」熟年離婚は99%やめたほうがいい 「嫌な夫」でも「仮面夫婦」のほうがまだマシだ

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ここからは、夫、妻、それぞれに知っておいてほしいことをご紹介します。

まずは、夫である男性が知っておくべきことについて。前述のとおり、妻が3号(専業主婦)の場合、夫の合意がなくとも、問答無用で該当する期間の厚生年金が半分もっていかれます。「専業主婦=内助の功がある」という前提でそうなっていますが、長らく別居していて生活費を受け取っているケースでも、法的に婚姻関係が続いていれば分割されます。ただし、住民票が同じである必要があります。

分割するのは婚姻期間中の記録分なので、修復の見込みがなければ早く離婚したほうがいいですし、離婚危機を感じたら、妻に働くことを勧めるのが得策です。妻が3号でなくなれば分割には両者の合意が必要になり、話し合いに持ち込むことができます。

離婚後、夫が死亡しても分割された年金は受け取れる

夫から年金分割を受ける妻に知っておいてほしいのは、離婚後、夫が死亡したらどうなるか、です。年金受給開始前に離婚し、年金分割をした場合、夫が死亡しても、予定どおり、分割された分の年金を受け取ることができます(夫が受け取るはずだった年金は、遺族年金として死亡時の遺族が受け取る)。したがって、年金分割をしていれば、夫の生死によって妻の年金額が変わる心配はありません。

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その後、妻(専業主婦)が死亡したとしましょう。妻の遺族はその分を遺族年金として受け取ることができます。それは、妻と再婚した夫にも権利があるということです。本人に厚生年金がない場合(自営業者だったなど)は、遺族年金が受け取れます。仮に、未婚の自営業の男性が、不倫の末に、夫から年金分割されているバツイチ女性と再婚したとします。再婚後にその妻が死亡した場合、なんと、その夫は彼女の遺族年金を受け取ることができるのです。

もし、年金分割を視野に離婚を考えているのでしたら、これらのことを十分考慮のうえ、慎重に判断することをお勧めします。

井戸 美枝 ファイナンシャルプランナー

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いど みえ / Mie Ido

神戸市生まれ。 関西と東京に事務所を持ち、年50回以上搭乗するフリークエントフライヤー。講演や執筆、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題をはじめ、年金・社会保障問題を専門とする。『世界一やさしい年金の本』(東洋経済新報社)、『知らないと損をする国からもらえるお金の本』(角川SSC新書)、『現役女子のおカネ計画』(時事通信社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください!』(日経BP)『親の終活、夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)など著書多数(ホームページ​経済エッセイスト井戸美枝FBページ)。

 

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