無自覚すぎる、夫たち
ではなぜ、産後クライシスは長く尾を引くのか?
ひとつは、この時期の妻が、”極限状態”にあることと大きく関係しています。
取材した女性の多くは、「これまで生きてきた中で、こんなにも自分の生き方が変わることはなかった」と語ります。産後の子どもの世話で眠れず、息のつけない日々を送る妻は、体力的にも、精神的にもぼろぼろ。産後のキャリアはどうなるのかといった社会的な不安まで抱え、かつてなくセンシティブになっています。そして、この時期の夫の行動を、彼女たちは本当によく観察しているのです。
もし、身近に子育てを経験した中高年の女性がいるなら、ためしに「産後に夫にされて腹がたったエピソード」を聞いてみてください。
注目すべきは、その再現性の高さです。何十年も前のこと を、まるで昨日の出来事のように語る女性たち。その姿を見れば、産後の夫の行動は長期記憶に刻み込まれる、ということを実感していただけると思います。
さらにこの問題の根が深いのは、夫が“無自覚に”地雷を踏んでいる場合があるということです。たとえば、視聴者へのアンケートなどでも以下のようなものがありました。
「里帰りから戻った自宅が、『赤ちゃんが住めるわけがないだろ』的なゴミ屋敷にされていた」
「夫が育休を取ってくれたはいいものの、自分の趣味にほとんどの時間を費やした」
「子どもがまだ3カ月くらいのときに、バイクの免許を取ろうかなと言い始めた」
育休時の趣味や、バイクのケースなどは、夫に無邪気さすら感じます。
これほどのケースでなくても、例えば「赤ちゃんが小さいうちに泥酔して帰宅した」経験はありませんか?こうした行為も無自覚という意味では、おそらくさほど変わりません。
人間は本当に追い詰められたとき、相手の無自覚な言動に、その人の本質を見た思いがするものなのでしょう。そして産後は、まさにそうした時期のひとつなのです。