こうしたテーマの中でも特に長期的で説得力がある論文なのですが、これによると、ひとたび出産後に愛情が冷めてしまうと、20年以上たってもその関係が戻らない夫婦がとても多いというのです。(子どもが思春期の時期に、さらに下がる傾向があることも指摘しています)
同様の研究は「イクメン」という言葉の名付け親とも言われる東レ経営研究所の研究者である渥美由喜さんも行っています。女性の愛情の配分がライフステージごとにどのように変わるのかを表した、いわゆる愛情曲線と呼ばれるものです。
青のグラフをご覧ください。妻の夫への愛情は、やはり産後に急速に落ち込んでいます。そして、一部のグループは回復していきますが、多くは低迷を続けていることがわかります。
2人の指摘で共通するのは、産後すぐの時期の夫の育児参加の重要性です。そして、菅原さんは特に産後1年の、渥美さんは幼児期までの夫の行動が、その後を決定していると考えています。いずれにせよ、産後半年をしのげばなんとかなる、という話ではなさそうです。
さらに、渥美さんはこの「低迷層」が将来の仮面夫婦や、熟年離婚につながる可能性にも言及します。産後にまいた時限爆弾が、子どもの思春期や親の介護で爆発するというのです。
それらの因果関係がどれくらいあるかについては、慎重に検討する必要があります。しかし、同時に取材した複数の家族カウンセラーたちも、やはり、産後の夫の行動が後の家族問題を生むきっかけになるとしています。
あなたは親の介護が問題になったとき、妻から「子どものおむつを変えなかった人(夫)の、親のおむつが替えられるわけがない」といわれたらどうしますか?
「過去を蒸し返しすぎだ」と思う人もいるかもしれませんが、妻たちのこうした主張にはシンプルな説得力があります。