「古いiPhone」の魅力が急上昇している理由 アップルがしてくれた2つのこと

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実は割引プログラムが発表されるまで、私はiPhoneのバッテリーを交換するなど考えたこともなかったし、2年で使いものにならなくなるのは仕方ないと思っていた。アップルはそういうつもりでiPhoneを設計しているから、新しい改良された新型が出たら丸ごと買い換えるのが賢いやり方だと。そして私のiPhoneは寿命が近づいているように思われた。数時間でバッテリー切れを起こし、何の前触れもなく電源が落ちることもあったからだ。

だがそんな時にアップルの「バッテリーゲート」が発覚した。iPhoneの動作が遅くなったと多くのユーザーが訴え、怒りの声が高まった。原因は、バッテリーが劣化して通常のタスクに対応できなくなると、シャットダウンを避けるために動作速度を落とすようにアップルがOSを改変していたことだった。

「iOS12」はこれまでのOSとは違う

はたしてこれは、わざと旧型の使い勝手を悪くした悪質な例で、まったく問題のなかった製品をわざとダメにして新型の売り上げを上げようとしたのだろうか。私はそうは思わないが、大手のテクノロジー企業の間でそうした行為が広く行われているとの根強い疑惑は以前から存在していた。幅広い批判に直面し、カリフォルニアでは訴訟を起こされた(今も係争中)アップルは昨年末、謝罪に追い込まれた。

この時アップルは声明で、iPhoneを長く使えるようにしただけで悪気はなかったと釈明した。またアップルは、旧型ユーザー向けに割引料金でバッテリー交換に応じるプログラムを始めると発表した。そして3月には、バッテリーの劣化状態をユーザーが簡単に確認できるように、OSのマイナーアップデートを行った。

新しいバッテリーのおかげで寿命が延びたとはいえ、これまでどおり9月に後継機種が出てOSも刷新されれば買い換えざるをえないだろうと私は思っていた。新しいOSの下では、旧型のiPhoneの動きは非常に遅くなるのが通例だったからだ。

だがアップルの幹部たちは、新OSのiOS12は違うと言明した。2013年以降に発売されたすべての機種で動作が改善されると言うのだ。「特に旧機種への対応に力を入れた」と、アップルのクレイグ・フェデリギ上級副社長(ソフトウエアエンジニアリング担当)は6月に述べた。「まだ先の話だが、これまでのところ結果には満足している」。

アップルはテスト環境下において、iOS12をインストールすると旧機種は非常に速く動くようになると述べている。たとえば起動までの時間はカメラアプリで70%、キーボードでは50%も速くなり、非常に作業負荷がかかっている状態で複数のアプリを動かした場合も最大で2倍ほど速くなったという。コンデナスト参加のウェブメディア「アルス・テクニカ」が掲載したレビューでも同じような結果が出ている。

次ページ早速iOS12をインストールしてみると…
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