<ミセス・パンプキンからのコメント>
父の首を絞めかけ、共に泣いた親子
今日も新聞記事の切り売りから始まり、同じ新聞を読んでいる方には申し訳ないのですが、山田さんに贈りたいピッタリのコラムを読んでいたところでした。長野県の諏訪中央病院で住民参加型の地域医療を進められ、大きな成果を挙げておられるかの有名な鎌田實先生のお話です。
先生は生後1歳で、貧しい養父母に引き取られました。37歳のときに先生は実父母でないことに気づきましたが、最後までご自分が実子でないことに気づいたことを知らせなかったほど、大切にかわいがられて育ったそうです。
小学校しか出ていない養父は、病弱の養母の治療費を稼ぐために朝から晩まで働き詰めで、それでもなお貧しい。「18歳の夏、大学に進みたいと打ち明けたとき、父に『貧乏人は勉強なんかするな。働け』と返されました。とっさに父の首を絞めかけ、自分がしたことに驚き、2人で泣きながら床にへたり込みました。父は『お前に自由をやる。あとは自分の責任で生きろ。うちのような貧乏人や弱い人のことを忘れるな』と言いました」。
私の過去のコラムで頻出していました、自由放任でまたは親子の強い信頼関係の下で、進路選択も決定も親子間の摩擦なくスイスイと解決してこられた方々には、今日の山田さんの悩みはわかりにくいと思われます。
天ぷら職人になりたい山田さんに、ご両親は事務系の仕事を勧めておられる。どう見ても利は山田さんにありそうですし、「自分の信じる道を歩めばいい、ただそれだけのこと」と思われるはずです。
山田さんがご自分の夢に向かって第一歩を進めるに際し、最大の障壁が、ご両親の意向となっています。しかもご両親の、大学を卒業しようとする年齢に達している息子に対する態度は依然として強圧的で、山田さんの意見をじっくり聞いて一緒に考えてくださる方々ではないのです。
「親子間の壁」より高い志を持て
そのような環境で育ってこられた山田さんにとっては、「親子間の壁」がとても高く見えるのは理解できます。ちょっと表現は悪いのですが、井の中のかわずは、井を通してしか外を見ることができないのと同じです。私にも身に覚えがありますので、山田さんの年代でのその悩みがとても深刻なものであることが、私には痛いほどよく理解できるのです。
「親子間の壁」は早晩、崩れる運命にあると思っています。鎌田先生の場合はお父様のほうから「お前に自由をやる」と宣言されてその壁をなくされました。山田さんのご両親にはそれが望めない以上、これまでの環境から考えると勇気のいることですが、山田さんから壁を乗り越えるしかありませんね。
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