イタリア政局をめぐる金融波乱は終わらない 加盟国の実態に適合しないEUの硬直的な政策
足元ではイタリア政府によるマイナス2.0%への譲歩が報道され、市場には安堵感が漂うが、欧州委員会がそれで満足するのかは不透明である。なお、構造的財政収支の均衡がないがしろにされ、新財政協定に抵触した状況が極まると、欧州司法裁判所への提訴を経て欧州委員会から制裁金が課される展開も視野に入る。
こうした状況の中、10月1日にはユーロ圏財務相会合が開催された。やはりというべきか当然というべきか、トリア財務相はDEFへの理解を獲得することができなかった。
ユンケル委員長は「新たなギリシャ型危機」と警戒
ジャン₌クロード・ユンケル欧州委員会委員長からは「ギリシャ危機の最も厳しい対応を経験したわれわれは、新たなギリシャ型の危機、今回はイタリアだが、その回避のためにあらゆる努力を傾ける必要がある」などと、危機の再来を不安視する見解が表明された。
そのほかの高官の厳しい認識も明確である。たとえば、マイナス2.4%という財政赤字に関し、経済・財務・税制担当のピエール・モスコビシ欧州委員が、コミットメント(約束)からの「極めて著しい逸脱」と指摘したことも報じられている。
ちなみにこうした混乱の最中、常識派と目されるトリア財務相やジュゼッペ・コンテ首相以外の同国政治家からは事態の悪化を招くような言動が相次いだ。
たとえばイタリア下院予算委員会のクラウディオ・ボルギ委員長は、地元ラジオのインタビューに応じて、「イタリアは独自の通貨によって問題を解決できると十二分に確信している」と述べ、ユーロ離脱を示唆する発言をした。
「五つ星運動」党首のルイジ・ディマイオ副首相(兼経済発展相)が、やはり地元ラジオに対し、2019年予算の目標について「1ミリも動かすつもりがない」と述べたことが報じられている。結果としてイタリア10年金利は上昇して3.3%を突破、2014年4月以来の高水準をつけた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら