ノーベル賞で脚光、「小野薬品」の期待と現実 「オプジーボ」拡大に喜んでばかりいられない
現在では小野薬品―米BMS連合のほかに、米メルク、英アストラゼネカ(AZ)、スイス・ロッシュ―中外製薬連合、米ファイザー―独メルク連合と、グローバル市場で5陣営がこの成長市場でしのぎを削っている。
中でも強力なライバルが、米メルクだ。オプジーボと同じ受容体を標的にした「キイトルーダ」とは世界販売首位の座を激しく競い合っている。
ライバルがアメリカで先行
市場の注目は、患者数の多い肺がん分野に集まる。キイトルーダは世界最大の市場であるアメリカで、肺がんの約8割を占める非小細胞肺がん(NSLC)の1次治療の販売承認を得ている。
1次治療薬であれば、治療の当初から薬を投与でき、販売拡大効果が格段に大きい。一方、オプジーボは2016年の単剤治験で主要項目を達成出来ず、アメリカでのNSLCの1次治療の承認取得に失敗している(ただし今年6月にBMSのがん免疫治療薬「ヤーボイ」との併用療法でNSLCの1次治療の適応承認を申請)。
直近の2018年4~6月期の米BMSの「オプジーボ」の世界売り上げは16.27億ドル。対する米メルクの「キイトルーダ」は、同16.67億ドルとなった。鼻の差ではあるが、四半期ベースで初めてキイトルーダの売り上げがオプジーボを上回った。
米BMSの売り上げには小野薬品の日本と韓国・台湾での販売額228億円は含まれていない。これを含めれば、全体ではまだオプジーボのほうが上回っている。ただ、勢いがあるのはキイトルーダで、市場では2018年通期では首位逆転の見方が強まっている。
もう1つのポイントが、単剤ではなく、ほかのがん治療薬との併用療法の拡大に治験競争の舞台が移りつつあることだ。
確かに、オプジーボなどのがん免疫治療薬はがん治療に革命をもたらした。一般的にはほかの抗がん剤と比べて投薬効果のある患者の比率(奏効率=がん細胞が一定以上縮小する患者数の比率)は高いと言われる。だが、それでも奏効率は現状で2~3割にとどまっている。
そうした弱点をカバーするのが、併用療法だ。働きの違うほかの治療薬と併用することで、奏効率や生存率などの効能を高める療法だ。
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