インスタ中毒な人をたくさん生んだカラクリ 「なじみ感」×「ネットワークの力」がカギ
はたして新しい考えや好みも、ウイルスのように広がるのだろうか。長い間、誰にも確かなことはわからなかった。うわさ、服のファッション(たとえば細身のジーンズ)、思想(たとえば普通選挙権)などが、人から人へどう広がったかを、正確に追跡することは難しい。そこで「素早く広まったが、どうして広まったのか定かでない」と言うときに、しゃれた表現として「バイラルに広まった」という言い方が一般的に使われるようになってきた。
7回以上シェアされるツイートはわずか1%
しかし現在では、新しい考え方が広まるときについた足跡が残っている場所がある。インターネットだ。たとえば、私がツイッターに何か投稿する。それはシェアされ、それがさらにシェアされる。この段階的広がりのそれぞれのステップが追跡可能である。科学者たちは、世界中を飛び交うEメールもフェイスブックの投稿の足跡も、たどることができる。デジタルの世界になってようやく、「新しい考え方は、本当にバイラルに広がるのか」という質問に答えることができるようになった。
その答えはあっさりと「ノー」だったようだ。2012年、ヤフーの研究者たち数人が、ツイッター上の何百万件ものメッセージの広がり方を調査した。
すると、90%以上のメッセージは、まったく広がらなかった。ほんのわずかの1%だけが、7回以上シェアされた。しかも、その中で最も多くシェアされたメッセージでさえ、本当に「バイラル」と呼べる広がり方をしたものはなかった。人々がツイッターで目にするニュースのほとんど──およそ95%は、元の情報源から「1次の隔たり」によって直接得た情報である。
インターネット上では、何もかもがバイラルに広がるように見える。だがおそらく、そういうことがあったとしても、非常にまれである。デジタル世界のメガヒットは、1対1がつながる瞬間が100万回存在したのではなく、1対100万の瞬間が何回かあったのだ。ヒットの世界全体を見てみると、この研究結果が示しているのは、記事、曲、商品などが、先ほどの図のような広がり方をしないということだ。ほぼすべての人気商品やアイデアは、1つの源から膨大な数の個人に、同時に(つまりウイルス感染のようにでなく)伝わるのである。
「バイラル」を信奉するマーケティングの担当者たちは、現代で何かの人気を高める唯一の道は、うわさや口コミによる広まりであると思い込んでいる。彼らは口コミの力を過大評価しているのだ。商品や作品自体が優れたものであることが前提だが、ヒットメーカーになるためには、人々のネットワークを理解することが同じくらい不可欠である。
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