インスタ中毒な人をたくさん生んだカラクリ 「なじみ感」×「ネットワークの力」がカギ

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クリエーティブな人たちは、「アイデアを売り込むためには、もっと市場に合わせる必要がある」とか、「違和感のない格好をしなければ」などと言われたらムッとするだろう。自分の新しいアイデアの優秀性は一目瞭然で、マーケティングなど不要だ、と考えるのは大変気分がいいからだ。しかし、学者であれ、シナリオライターであれ、起業家であれ、すばらしい新規のアイデアがあるのにマーケティングに失敗するのと、ほどほどのアイデアを卓越したマーケティングに乗せるのとでは、破産と大成功という違いにつながりかねない。

コツは、新しいアイデアを、これまでにあるものをひとひねりしたかのように作ることだ。少しの「流暢性」に少しの「非流暢性」を混ぜ、視聴者や消費者に驚きを与えながらも、どことなくなじみ感を覚えさせることである。

「バイラル・マーケティング」の真実

インスタグラムをヒットに導いたのは、商品の魅力だけではない。それが乗り込んで行ったネットワークの力でもある。完璧なものを作るだけでうまくいくことはまれで、それをどのようにして届けるべき相手に届けるか、同じくらい注意深く計画を立てる必要がある。

にもかかわらず、人々のネットワークについては多くの場合正しく理解されていない。たとえば、新しい流行を、まるで「病気」であるかように語るのが流行になっている。ポップソングに「感染力がある」と言ったり、商品に「伝染性がある」と言ったりする。広告業界とプロデューサーたちは、「バイラル・マーケティング」という理論を生み出した。誰かが口にしたことがすぐに周りに広がり、それが社会現象にまで発展することを意味する。この理論は、企業はもはや商品をはやらせるための複雑な「ディストリビューション戦略」を必要としないという考え方を後押しした。本質的に感染力を持つものを作りさえすれば、作り手は何もせずに、ウイルスが爆発的に拡大するのを待っていればいいというわけだ。

疫学におけるバイラル(図:『ヒットの設計図――ポケモンGOからトランプ現象まで』より)

疫学において、「バイラル(ウイルス性)」という言葉の意味はもっと明確である。それは、病原菌が、菌自体が死ぬ、あるいは感染している人間が死ぬ前に、少なくとも2人以上に感染することである。ウイルス性の病気は、指数関数的に広がる可能性がある。1人から2人、その2人が4人、4人が8人──。あっという間に大流行に発展する。

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