古代から山と人々には密接な関係があり、ほとんどの山には登山道(ハイキングコースなど)が設備されている。この“財産”を「地域活性化」に生かそうと、山々を抱える市町村が、「地域おこし」の一環でトレイルレースを行う動きが顕著になっているのだ。そこで、「道志村トレイルレース」を主催している道志村観光協会の諏訪本次伯会長に、トレイルレースとその効果について話をうかがった。
山梨県にある道志村は、山中湖から車で20分ほどの場所にあり、周囲には標高1000mを超える山々が連なっている。関東有数のキャンプ場密集地で、クレソンが特産品という村だ。川釣りや、日帰りの温泉施設など、魅力的なコンテンツはあるものの、近隣の市町村と差別化を図れるだけのビッグコンテンツを持ち合わせていなかった。村の人口は1847人(2013年10月1日)。ゆっくりと過疎化が進んでいる。
「いくら道路(国道413号)を整備しても、車が通るだけで、足を止めるお客がいない。観光の“メニュー”がありませんでした。そこでメニューをつくることを考えたのです。当初はロードレースという案もありましたが、国道の使用許可をとるのが難しい。歩道を走るにも、3m以上の道幅がないとダメなんですね。
林道などをレース用に整備するにはおカネがかかりますが、トレイルレースなら自然道をそのまま使用することができる。しかも、厳しいコースのほうがランナーは喜ぶことがわかったのです。道志村には山梨県百名山のうち5つの山がありますから、これはピッタリだと思いました」(諏訪本さん)。
山といえども、国立公園は規制が厳しくなかなか使用できないが、県立公園は知事の許可があれば使用できるという。道志村の真ん中を流れる道志川が横浜市の水源になっていることもあり、道志村の山々は7合目より上の多くが横浜市の市有地。そのため、山でのレース許可はすぐに下りた。トレイルレースのノウハウは、いくつもの山岳レースを開催している「北丹沢12時間山岳耐久レース実行委員会」から学び、2008年から道志村トレイルレースを開催することに。そして、今年5月に5回目のレースを終えた。
第1回大会はロングコース(43.3km)のみだったが、第2回大会からはロングコースの(41.3km)のほか、ハーフコース(20.2km)を新設。徐々に参加者数を増やし、第5回大会は952人(エントリーは1119人)が参加するほどになった。なお、ロングの完走率が60%前後と非常に厳しいレースのため、毎年エントリーの1割ほどが欠場するという。
コースの高低差にもよるが、トレランレースと一般的なロードレースではその難易度が全然、違う。道志村トレイルレースの場合は、ほとんどのランナーが平地を走るときの2倍ほどのタイムを要している。誰もが気軽に参加できるレースではないため、近隣からの参加者は少なく、都心部からの参加者が大半だ。これは一般的なロードレースと大きく違う部分だろう。
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