「お友達重視」「派閥均衡」…安倍人事の問題点 甘利氏の選対委員長起用には懸念の声も
また、首相が悲願とする憲法改正については、昨年衆院選での政界引退後も首相から党内とりまとめ役を委ねられてきた高村正彦元外相が副総裁退任となった。首相は後継を指名せず、高村氏は党憲法改正推進本部の顧問として引き続き党内とりまとめに協力する。さらに、同本部長には首相側近の下村博文元文科相が起用された。加藤総務会長と併せて「側近シフト」で党内の改憲論議を押し進めるとの首相の狙いからだ。
党人事の中で注目されたのは稲田朋美元防衛相の筆頭副幹事長起用だ。稲田氏は首相の寵愛を受け、当選回数は少ないのに第2次政権発足以降、党政調会長など党・内閣の要職を歴任してきた。ただ、防衛相時代に自衛隊の日報隠ぺい問題への対応や、東京都議選での不注意な発言などで辞任に追い込まれ、「初の女性首相の有力候補」(首相)の座から追われていた。
党三役経験者の筆頭副幹事長というのは異例の降格人事にもみえるが、「本人が望んだ」(政界関係者)とされ、首相サイドは「もう一度雑巾がけから再出発してもらうため」と解説する。さらに「うちわ問題」で法相辞任に追い込まれた松島みどり衆院議員の党広報本部長起用とも併せて「女性活躍に向けた"再生工場"人事」(石破派幹部)と揶揄する向きもある。
総裁選の際に人事構想を問われた首相は、「適材適所」だけ強調し「挙党態勢」という言葉は避けてきた。総裁選での石破氏の挑戦に「敗者は冷遇するべきだ」(麻生派幹部)との声が相次いだからだ。今回の人事でも、首相は石破氏の起用を検討しなかったとされる。
ただ、総裁選では地方票で石破氏が首相に迫ったことも踏まえ、首相は人事調整の最終段階で石破派の若手(衆院当選3回)で検察官出身の山下貴司元法務政務官を法相に抜擢して「挙党態勢」をアピールしてみせた。ただ、他の初入閣組と違って山下氏は石破氏との事前調整抜きの「一本釣り」でもあり、石破派幹部も当惑を隠さない。
経済・外交で視界不良、参院選が正念場に
第4次安倍改造内閣の発足で、総裁3選による新たな3年間の政権運営が本格始動する。内政面では総裁選前後に相次いだ台風や地震による大災害に対応するための補正予算の編成が最優先となる。さらに首相は年末にかけて、国際舞台で連続する各国首脳との会議・会談で安倍外交の成果を挙げたい考えだ。ただ、貿易摩擦をめぐる日米協議は難航必至で、「拉致・核・ミサイル問題の解決」が大前提となる北朝鮮との交渉も道筋が不透明のままだ。
首相が悲願とする憲法改正での自衛隊明記も、公明党の抵抗などで早期国会発議の見通しはまったく立っていない。そのうえ、アベノミクスの完結と異次元金融緩和の「出口」もまったく見えないのが実態だ。
来年の統一地方選と参院選は首相にとって「史上最長政権への正念場」(側近)ともなるが、今回の新体制の顔ぶれをみる限り「自民党の選挙勝利に結びつくとは思えない」(自民長老)との声も多く、参院選までの10カ月の政局は、首相の思惑とは異なる波乱含みの厳しい展開となりそうだ。
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