「お友達重視」「派閥均衡」…安倍人事の問題点 甘利氏の選対委員長起用には懸念の声も
政治的にみれば、今回の人事で「最大のサプライズ」(石破派幹部)は麻生氏の続投だ。
前代未聞の公文書改ざん事件や事務次官のセクハラ辞任など財務省の不祥事が相次いだだけに、首相と親密な橋下徹前大阪市長も「財務省に対する調査能力欠如だ、留任はダメだと思う」と批判した。
石破氏が総裁選で「役人だけに責任を負わせるような自民党であってはならない」と指摘した経緯もあり、麻生氏の続投することが、首相のいう「政権のしっかりした土台」となるかどうかを疑問視する向きも多い。
麻生氏とともに首相が最も信頼する盟友ながら、金銭スキャンダルで経済再生相辞任に追い込まれた甘利氏の党4役起用とも合わせて、野党やメディアから批判の対象となり、臨時国会などで混乱の要因となる可能性もある。永田町では、首相と麻生、甘利両氏との関係を「一蓮托生」「運命共同体」などと呼ぶが、「首相の友情が墓穴を掘るのでは」(岸田派幹部)との危惧は消えない。
初入閣組は12人、総裁選での論功人事を優先
注目された初入閣組は12人と第2次安倍政権以来最多となった。党内の入閣待望組が約80人に膨れ上がる中、総裁選での論功人事が優先された格好で、大半の初入閣組は60代(原田氏は70代)で、最年少は党総裁補佐から文科相に抜擢された柴山昌彦の52歳。内閣の平均年齢も62歳台の「高齢内閣」となり、新人の数の多さとは裏腹に「人心一新」や「新鮮味」には欠ける陣容となった。
具体的人事配置をみると、総務相に市長経験者の石田真敏元財務副大臣、防衛相に岩屋毅元党防衛部会長など担当職務に精通した実務派の起用が目立つ。再入閣組の根本匠厚労相とも合わせて、首相サイドは「適材適所の人事」を強調した。
ただ、入閣待望組から選ばれた新閣僚の多くは、「派閥の推薦を受けて、ポストを割り振った」(二階派幹部)のが実態とされ、党内には「滞貨一掃人事」(閣僚経験者)と酷評する向きもある。
一方、党役員人事では二階幹事長、岸田政調会長が再任され、総務会長に竹下派の加藤勝信前厚労相、選対委員長に甘利氏が起用された。総裁選で首相を支持した二階、岸田両派の領袖に、竹下派と麻生派の有力者を組み合わせた「派閥均衡人事」だ。
首相とも親しいのに石破氏支持に回った竹下亘・竹下派会長に代わり同派所属の加藤氏を総務会長に起用したのは、首相の竹下派への配慮ともみえる。ただ、加藤氏はもともと「隠れ細田派」とされ、竹下派内では同派幹部の茂木敏充経済再生相の留任とも合わせて、「派閥に手を突っ込んだお友達人事」(若手)との不満も広がる。
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