「災害報道」で問われるローカル局の存在価値 被災エリアの放送局が伝えるべき情報とは?

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ラジオカーの行き先は札幌市役所、JR札幌駅、札幌駅前地下歩行空間、大通公園、ホームセンターといった誰もが気になる場所。コンビ芸人のしろっぷが、市役所での充電サービスにどれだけの人が並んでいるか、駅はどのような様子か、日本人/外国人観光客の動き、ホームセンターの客が何を求めて来たかなどを、報道記者顔負けの的確さでレポートしていた。

また、STVラジオ、HBCラジオともに夕方のナイター中継を取りやめ、報道特番を放送。そのなかでHBCラジオは、東北放送(TBC)が東日本大震災の教訓を基に作成した、災害時の心得を紹介した。東北放送が「リスナーの役に立てば」と自発的に送ったものだ。こうした思いやりは、ローカル局ならではといえる。

STVテレビは、6日に本社前へテレビを設置。すべての家庭が停電している状況において、テレビでの情報提供を行った。並行して同局ウェブサイトと公式ユーチューブチャンネルで、地震関連情報番組の配信をしている。HBCテレビは、同局の無料動画配信サービス「もんすけ」で地震関連情報番組を配信。公式ツイッターで道内各市町村のつぶやきを積極的にリツイートしているのは、両局とも同じだ。

ローカル局の強みは地域住民との近さ

さて、西日本豪雨、台風21号、北海道胆振東部地震すべてに共通するのは、被害が広範囲にわたっていることである。8日になり、台風21号の影響で和歌山県、京都府、大阪府、奈良県、滋賀県、兵庫県の一部地域、約3万1000戸で停電が長期化する恐れがあると発表された。北海道胆振東部地震に至っては、本原稿執筆時点ではまだ全貌がはっきりしていない。

7月の西日本豪雨ではどうだったのか。

「金曜日(6日)に災害が起きて、2日後の日曜日(8日)に大きな被害が出た坂町(安芸郡)の小屋浦へ向かったのですが、その時点ではヘリからの映像しか情報がありませんでした。道路も通行止め、電車も不通だったので、普段だったら30〜40分で行けるところを、フェリーを乗り継いで呉まで行き、そこから歩いて小屋浦に向かって。フェリーに乗ったのは宇品港という広島で一番大きな港なのですが、そこのコンビニに商品がない。物流が止まっていたんですね。昼食を用意していこうと思っても、補助栄養食ぐらいしかなくて。大変なことが起こり始めていると感じました」(RCC青山アナ)

「すぐに現地に行けないところもあったので、マスコミも自治体も、全体像を把握するには時間がかかりました」(同・岩永D)

では、取材クルーが入れない場所の情報を、どうやって得たのか。

「視聴者から動画や写真を送ってもらう、『RCCスクープ投稿』というシステムがあるのですが、そこから発生直後の被災地の様子が寄せられました」(同)

「スクープ投稿に写真や動画を送ってくださった方に電話をつないで、『送ってもらった写真は何月何日何時頃のどこですか?』『今、一番困っていることは何ですか? 必要な物は何ですか?』と尋ねて。そうすると、『小さな生活道なんですけど、そこの橋が落ちていてみんな大変なんです』といった、細かい情報を教えてくれるんです」(青山アナ)

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