小学校の英語教育に潜む3つの深刻な「わな」 これでは英語は話せるようにならない

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言葉は、まず自分の気持ちがあって、それが言語として表出されるものです。なので、まず何を伝えたいか、何を表現したいかが重要です。しかし、パターン・プラクティスばかりを繰り返していると、自分の気持ちを表現するどころか、言葉から気持ちが離れていってしまいます。結果として、子どもはそれを身に付けることはできません。

単に単語を言い換えるのは、あくまでも「言い換えゲーム」であって、コミュニケーションで使用する英語としては成立しないので身に付きません。子どもが英語を学ぶ場合は、自分が言いたいことを英語で言うことが重要です。なぜなら自分の言いたいことを気持ちを伴って発語することを通して、子どもは言葉を身に付けていくからです。

むしろ嫌いなものの話をしたほうが…

前述のK君の授業の場合、むしろ「I don’t like soccer because...」といった文章を作ってみるほうが、子どもたちは豊かに思考をめぐらせることができたでしょう。嫌いな理由はさまざまですから、小学生は柔軟な発想で自分なりの意見をあれこれと考え、発言も活発になります。このように小学生の特性をつかんでいれば、ちょっとした工夫で活発な表現は引き出せます。

そのためにも、子どもが面白いと感じたり、興味の持てる内容を選ばなければなりません。授業の課題をこなそうとするばかりに、無意味な内容の文章を与えても、子どもにとってそれは他人の言葉であって、自分の言葉にすることはできません。さらに、その気持ちとなった言葉は、キャッチボールをしてこそその役割を果たします。なので、パターン・プラクティスではなく、子ども同士が自然にやり取りできる環境設定が必要です。

現在使用されている『We Can!』では、「子どもの日常生活に沿った、子どもの興味や関心に合う題材の設定がされている」(文部科学省)ということですが、指導方法によって、それが生かされもしますが、これまでの中学校での英語の授業のようになってしまう危険もはらんでいます。だからこそ、先生の工夫は不可欠です。小学校の先生は全教科を指導していて、生活全般も含めて子どものことをよく知っていますので、その点は大いに期待したいところです。

2. 自主性を尊重しない

2つ目のわなは、子ども自らに気づきを与えない指導方法です。

新学習指導要領の外国語の目標では、「外国語の音声や文字、語彙、表現、文構造、言語の働きなどについて、日本語と外国語との違いに気づき……」とあります。体系的に英語を学ぶ中学校の授業のように教師から教えてもらうのではなく、学習者である子どもが「違いに気づく」ことが目標とされているのです。

小学生くらいの子どもは多くの英文に出会っているうちに、たとえば「文章は大文字で始まる」「複数形の単語にはsがつく」「疑問文の最後は上がって(または下がって)発音する」などといったことに自ら気づくことができます。小学生年代では、どの科目でも同じことが言えると思いますが、一方的に教えられて学ぶよりも、自分で気づくことでその科目への関心が増し、学びへの意欲が持てるのです。

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