ヒットが出ない!「スマホゲーム」業界の憂鬱 主要企業で減益・赤字が相次ぐ深刻な理由

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新作でヒットを生み出す難易度は年々上がっている。市場全体の大きな伸びは見込めないため、既存の有力タイトルからシェアを奪う必要がある。強力な海外勢との競争にも勝たなければならない。スマホゲーム各社は一様にIPを活用した展開の強化を図るものの、有力IPの多くはすでにスマホゲーム化されているため、それも簡単ではない。

開発費は黎明期の5倍以上の水準に

新作のヒット率が下がる一方で、ゲームに求められる品質は高まり、開発費の高騰が止まらない。黎明期は1億円以下が多数だった1本当たりの開発費は、今や5億円以上になることも珍しくない。

売り切り型のゲームとは違い、運用にも人手と費用がかかる。別のスマホゲーム会社幹部は「コストに比例して、収支のハードルも年々上がっている。今はオリジナルで月商3億円、IPモノなら5億円のタイトルを毎年コンスタントに出して、ようやく採算が合う」と難しさを語る。

今年6月には、ゲーム開発会社のシリコンスタジオが自社企画のスマホゲーム開発・運営事業を売却するなど、スマホゲーム開発から手を引く動きも出てきている。今後、業界再編の動きは活発化するのか。前出の国内大手ゲーム会社幹部は、「証券会社などから持ち込まれる売却案件は確かに増えている」と明かす一方、「買い手がどれだけいるか。少なくともウチは今さら同業のゲーム会社が欲しいとは思わない」と話す。

かつては多くの新興企業が“一獲千金”を果たしたスマホゲーム業界。今でも巨大市場であることは変わらず、ヒットすればそれだけリターンも大きい。一方で、高騰する開発費に耐えられるだけの財務的体力も求められる。特に中堅以下のスマホゲーム専業会社にとっては、厳しい局面が続きそうだ。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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