生涯現役という言葉は、巷間でもよく使われている。が、多くの人が生涯現役でいられるわけではないのが、現状だ。ましてや、生涯現役でいたいとは思わず、静かに余生を楽しみたいと思う人もいるだろう。
ただ、これから政府が議論の俎上に乗せたいことは、働きたくない高齢者に無理やり働かせるわけではないし、高齢者になっても働かなければ老後の生活が維持できないような改革を進めるわけでもない。
目下、わが国で支障をきたしているところとして、働きたい高齢者が働く機会に恵まれないことや、健康な状態を長く維持できないことで高齢でも活躍できる期間が限られていることがあり、それをどう打開するかが焦点となっている。
高齢者の8割が70歳以降も働くことを希望
現に高齢者の8割が70歳以降も働くことを希望している。他方、働く高齢者ほど健康な状態である人が多く、医療・介護費が低い。こうした現状を踏まえて、高齢者雇用のさらなる促進や健康寿命の延伸などに向けた、具体策が検討されることになる。
今のところ、この検討は「未来投資会議」が中心的な役割を果たすことになるが、その知恵出しは、経済産業大臣の諮問機関である産業構造審議会に設けられた「2050経済社会構造部会」が担うことになる。
高齢者雇用のさらなる促進による恩恵は、1つに、働く高齢者ほど医療・介護費が低いことが挙げられる。医療・介護費が低いことは、財政面の恩恵にとどまらない。医療・介護費が多いと、比例的に医療や介護の自己負担も多く必要となるから、高齢者の家計を圧迫する。
長寿化する中で、医療や介護の自己負担が多くかさむとなると、若い現役時代から多めに貯蓄をしておかなければならなくなる。健康であることで、医療・介護費が低くなることは、まずは本人のためだ。
働く高齢者が増えれば、社会保障の支え手側に回る高齢者も増える。少子高齢化が進み、支え手となる就業者が減ることで、わが国の社会保障が維持できなくなると懸念されている。
支えられる高齢者を65歳以上と定義すると、2012年には1人の高齢者を3人弱で支える”騎馬戦”型の社会だったのが、支え手の減少によって、2017年には1人の高齢者を2.1人で支える状態になり、2050年には1人がほぼ1人を支える”肩車”型の社会になるといわれている。
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