日本の自動車株にくすぶる「追加関税」リスク 自動車は対日赤字の7割占めている

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「中国に対抗するグループを米国が作ろうとするなら、欧州と日本を引き入れるはず。両地域経済に大きな影響を与える自動車への関税や輸出規制は控えることになるのではないか」(三井住友銀行のチーフ・マーケット・エコノミスト、森谷亨氏)との見方もある。

米国の貿易赤字全体は7961億ドル(2017年)で、対中国が3752億ドルと47%を占める。対日赤字は全体でみれば8.6%にすぎない。

今回の日米通商交渉では、「聖域」として自動車産業を守る日本の強い姿勢がみえた。17年の自動車輸出額は11兆8000億円で、そのうち米国向けは4兆6000億円と約4割を占める。

日本の自動車産業は、完成車メーカーを頂点に部品のサプライチェーン(供給網)が組まれ、機械や素材なども含めて裾野が広いのが特徴だ。米国にとって日本の自動車は貿易上大きな比重ではないが、日本にとっては死活問題だ。

「北米自由貿易協定(NAFTA)の比ではない。日本の産業に桁違いの影響がある」──。フィデリティ投信・運用本部のインベスメントディレクター、福田理弘氏は対米輸出車に25%の関税がかけられた場合の影響をこう指摘する。

みずほ証券の試算によると、米国の自動車輸入関税が25%に引き上げられた場合、自動車部品も含めれば2兆円のコスト増となる可能性がある。東証1部企業全体の19年3月期の経常利益予想(金融を除く)42兆6000億円の約5%に相当し、「日経平均で1000円級の下げ要因になる」という。

のしかかる複数の弱気要因

もっとも、日米自動車交渉が無難に終了したとしても、悪材料出尽くしとして自動車株が反発するのは難しいかもしれない。米自動車需要のピークアウト予想や、次世代車両の開発に向けたコスト増など弱気要因が重くのしかかっているからだ。

米国自動車販売は下り坂。IHS Markitの市場予想によると、米国の18年の自動車販売(総重量6トン以下のライトビークル)は1703万台。17年の1724万台から減少する見通しで、19年は1676万台へとさらなる減速が予想されている。

電動化や自動運転化に向けた研究開発コスト増も重荷だ。インベスコ・アセット・マネジメントの取締役運用本部長、小澤大二氏は「研究開発投資にフリーキャッシュを使わざるを得ないが、最終的に勝ちゲームになるか分からない。その分将来に対する不確実性から、バリュエーションを押し下げる要因になる」と指摘する。

BNYメロン・アセットマネジメント・ジャパンの日本株式運用部長、王子田賢史氏は「この話(日米交渉)が出る前から、完成車セクターに弱気。特段投資を増やすつもりはない」と話す。

9月半ばからの上昇でTOPIX<.TOPX>は前年末水準まで戻しているが、東証業種別指数の輸送用機器<.ITEQP.T>は5.1%と依然大きなマイナス。このアンダーパフォームを修正するのは容易ではなさそうだ。

(杉山健太郎 編集:伊賀大記)

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