リーマン破綻から10年で世界は変わったのか 今も続く恐怖と後遺症、次に来るリスク

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考えてみればリーマン・ショックもまた、証券化商品やサブプライムローン、クレジットデフォルトスワップ(CDS)といった新種で、従来なかった金融商品が原因となった。あの時点では、金融イノベーションの一種だったといえるかもしれない。

仮想通貨に加えてブロックチェーン、フィンテックといった金融イノベーションの成果は、いま大きなビジネスになろうとしている。しかし新しいビジネスは、いつまた破綻するかもわからない。

不動産市場

アメリカの住宅市場はすでに価格が下落しつつあり、住宅バブル終了も近いと言われる。住宅市場が弱くなれば、商業ビルなどの不動産市場全体に影響が出てくることになる。

ちなみに、リーマン・ショックの原因となった証券化商品が、いま中国で急速に拡大していると言われている。まだアメリカほどの金額ではないが、中国のバブル形成に一役を買っている。証券化商品の破綻は、その処理が極めて面倒で、大きな被害が出るために、注意しておく必要がある。

リーマン・ショック10年の教訓は生かせたのか?

リーマン・ショックから10年、世界は教訓として生かせているのだろうか……。

残念ながら、やや疑問と言わざるをえない。本来であれば、緩やかで安定した経済成長を遂げるはずだったアメリカ経済は、ポピュリズムを原動力とするトランプ政権が誕生したことで、株価は意図的に大きく上昇し、住宅価格も値上がりした。アメリカはまた強欲主義に戻ってしまった、ともいえる。

過剰流動性は、トルコや南アフリカといった外貨準備高の少ない国の財政を悪化させ、莫大なドル建て債務を背負いながら、いつまたトルコショックのような通貨危機を引き起こすかわからない。

日本の場合、幸いなことに金融の最前線を走っていた金融機関が少なかったためにリーマン・ショックは最低限の被害で済んだ。とはいえ、日本の抱えるさまざまな諸問題はこの10年で何一つ解決してはいない。むしろ増幅されたような気がしてならない。

欧米が期間限定で実行した経済政策も、日本では効果的な成功を挙げられていない。財政をきちんと立て直して、小さな政府を目指すべきではないのか。そして、できるだけ政府から民間に権限を委譲した、自由な経済に切り替えるべきではないのか。

アメリカが、いち早くリーマン・ショックから立ち直った背景には、日本のような政府補助金が一切なく、民間企業の自由が保障されていたからだ。銀行を救済したことも激しく非難された。

投資家レベルで言えば、10年前のリーマン・ショックで大きな損失を経験した人も多かったはずだが、自分自身で考えてリスクを最小限にする運用を心掛けるしか方法はないのかもしれない。いずれにしても、これからの10年、日本に住むわれわれにとっては正念場の10年となるだろう。自分の資産を守り、生き残るためのノウハウを身に付けることだ。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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