リーマン破綻から10年で世界は変わったのか 今も続く恐怖と後遺症、次に来るリスク
②モラルハザードの崩壊……リーマン・ショックを引き起こした大きな原因の1つに、投資銀行などの自己勘定による金融取引の存在がある。この投資銀行の動きを閉鎖することが、リーマン・ショックの解決策とされ、ボルカールール、いわゆる銀行の「市場取引規制ルール」が成立したのだが、オバマ政権の成果を片っ端から崩そうとするトランプ政権の誕生によってうやむやにされつつある。
結局のところ、投資銀行は復活し、また元の利益優先の強欲主義がはびこりつつある。リーマン・ショックを引き起こしてしまった、投資銀行のCEOなどの責任はほとんど問われず、結局は「やった者勝ち=バレなければいい」といった「モラルハザード(倫理観や道徳観の欠如)」が起きてしまっている。金融業界にとって何よりも大切なモラルが崩壊したわけだ。
①格差社会の拡大……リーマン・ショックが起きた直後に湧き起こった「Occupy Wall Street」運動は、若者を中心とした格差社会への抗議運動だった。世界が保有する資産の半分を1%の富裕層が独占している――そんな現実が明白になったからだ。
リーマン・ショックから10年が経った現在、格差社会は一向に縮小する気配がない。むしろ、格差はますます拡大していることを示している。
②ポピュリズム=極右政権の台頭……リーマン・ショック後に現れた大衆迎合主義=ポピュリズムの台頭は、いまや世界を混乱に陥れている。リーマン・ショック直後のアメリカ大統領選挙では、従来の価値観を持つオバマ大統領が当選し、リーマン・ショックからアメリカを救ったわけだが、8年後の大統領選挙ではアメリカ第一主義を唱えるトランプ政権が誕生してしまう。この8年の間に世界は大きな転機を迎えたわけだ。
大衆が望む政策を羅列して人々の多数派を狙う「大衆迎合主義(ポピュリズム)」は、世界中で支持を得て、着実にその勢力を伸ばしている。とりわけ欧州ではその勢いが増しており、最近もスウェーデンの総選挙で移民排斥を唱える極右政党が第1党に躍り出ている。
1929年の大恐慌後、ヒトラーや日本の軍事政権の誕生を許すなど、恐慌(金融危機)とポピュリズムには大きな因果関係がある。世界中で拡大する極右政権誕生の背景には、100年に一度の金融危機があったと考えるのが自然だ。
次に来るリスクは何か?生き残るための準備を!
現在の金融市場は、リーマン・ショックの影響から今も解放されていないと考えたほうがいいのかもしれない。というのも、あれだけお金をばらまき続けたアメリカや欧州が、ここに来て景気回復を理由に資金を引き揚げて過剰流動性を逆回転し始めたからだ。
たとえばFRBは、予告したとおりバランスシートの縮小を開始しており、すでに2520億ドル(28兆円)の保有資産を減少させている。中央銀行のバランスシートは拡大すればするほど市場に資金が回り、あらゆる資産の価格が上昇する。バランスシートの縮小とはその逆を意味する。金融市場から資金が消えるという意味だ。
実際に、FRBやECB、日本銀行の3行を合わせた市場からの買い入れ額は、この1年で月額1000億ドルからゼロになる見込みと言われる(2017~2018年第4四半期)。この1年間で月額11兆円のマネー供給が市場から消えたわけだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら