リーマン破綻から10年で世界は変わったのか

今も続く恐怖と後遺症、次に来るリスク

やがて、1930年代の世界恐慌後の社会がそうなったように、世界には「ポピュリズム(大衆迎合主義)」が跋扈する、極右政権や軍国主義がはびこる社会へと変質していくことになる。結果的に、アメリカ第一主義を抱えるトランプ政権のような悪夢に近い政権が誕生してしまった。

リーマン・ショックが人類にもたらしたもの

いずれにしても、10年前のリーマン・ショックがこの世界に残したものは金融市場に限らず、政治に対する考え方などにも大きな影響を与えた。

リーマン・ショックは人類に何をもたらしたのか……。簡単にピックアップしてみたい。

<金融市場にもたらされた影響>

①過剰流動性……リーマン・ショックは、急激な流動性の枯渇が原因のひとつだと指摘したが、その対策として取られたのが大規模な金融緩和であり、非伝統的な量的緩和だった。リーマン・ショック収束後も、ギリシャなど欧州の通貨が大きく下落するなど、金融市場は何かと流動性が枯渇する事態となり、実体経済もまさに「つるべ落とし」のような不況に見舞われていく。

そんな中で、恐慌の専門家でもあった「ベン・バーナンキFRB議長」が実行した政策というのが、非伝統的な量的緩和政策「QE」だ。FRBが長期国債などを購入する方法で、莫大なマネーを金融市場にばらまいた。ヘリコプターからお金をばらまくような金融政策であったために、バーナンキ議長には「ヘリコプター・ベン」というニックネームが付いた。

実際に、リーマン・ショック直前のベース・マネー(世の中に出回っている資金と中央銀行に預けられた当座預金)は、約8720億ドル(2008年8月)から2兆6480億ドル(2012年1月)となり、ざっと3倍に膨れ上がった。FRBがそれだけ輪転機を回して紙幣を増やしたわけではないが、世の中に出回るマネーの量を増やしたわけだ。

同様に、ECB(欧州中央銀行)や日本銀行なども、追随して異次元の量的緩和政策を実行。異次元、非伝統的な量的緩和によって、世界経済は平常な姿を取り戻していく。金融危機の拡大は過剰流動性によって避けられたのだ。

そしていま、アメリカは量的緩和政策を廃止し、金利を引き上げて、そのうえで肥大化したFRB自身のバランスシートを縮小する作業に取り掛かっている。ECBもまた、この9月から緩和縮小(テーパリング)を開始し12月には終了させると宣言している。

日本銀行だけが依然として量的緩和を続けているが、いずれにしてもリーマン・ショックによる後遺症で、世界にはマネーがあふれてしまった。過剰流動性は至るところでバブルを引き起こす。世界は、今後大きなツケを払わなくてはならないかもしれない。

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