塚原副会長、TV生出演に見たパワハラの温床 組織トップが使ってはいけない4つの言葉

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しかし、それでも話を止めないのが塚原副会長。「(妻が現場を仕切った)ロサンゼルスとソウルの団体は五輪に出られました。そのあと例のボイコットという事件があって退きました。そこから(妻のいない)4大会、バルセロナ、アトランタ、シドニー、アテネの団体は出られませんでした。そのときのリーダーはちゃんといましたよ。いや……あの、『その人がやってない』というわけじゃないんですよ。でも実績としてそういう(良くない)時代があった。北京のとき、『やってくれ』という要請を受けていきなり5位になって、ロンドンで6位、リオで4位になった。やっぱりこの実績を見てわれわれ執行部は、五輪の切符を取る取らないというときに、『このリーダーをお願いしなきゃ』という発想でやっています。これは僕、全然おかしくないと思っています。でも、そうじゃない派閥というか、人たちが……」と一気にまくしたてたのです。

このコメントもみずからを称える一方、他の強化本部長を貶めていました。また、「最高位となったリオ五輪の4位は、今年7月に亡くなった元強化本部長・小林隆さんの功績が大きい」という声もあるなど、すべてを鵜呑みにはできないという見方が妥当なライン。塚原副会長は、ここまで1時間以上話してきて、口が滑らかになりすぎてしまったのかもしれません。

これもビジネスパーソンには反面教師になるポイントであり、「長く話せば話すほど、思っていた以上のことまで言ってしまう」のは誰にでも起こりうることなので気をつけたいところです。特に部下を指導する際は、長くなればなるほど余計なことまで話して「パワハラ」と思われかねないので、早めに切り上げるべきでしょう。

あいまい、無責任、自己主張、断定と否定

トークの終了時間が近づいてきたとき、塚原副会長は改めてパワハラ問題について語りはじめました。

「速見コーチの無期限登録抹消の処分が出てから、そういう(パワハラ)問題が起きています。それまでは一緒にいつでも練習できる環境にありましたから」「引き抜きの話とかは、処分が決まったあとじゃないでしょうかね」「きっとね。だから(パワハラは)あとづけのような感じがしないでもないです」。宮川選手に直接会って謝罪したいと発表していたにもかかわらず、「あとづけ」という批判を口走ってしまいました。

「だから、こんなことになるとはまったく想定外で、協会にも何にも連絡なしにポーンと会見やっちゃったもんだから。あれ? 何で? この3週間で何があったのかいろいろ想像しちゃいますね」「見方を変えると、全然変わっちゃうようなこともあると。僕らもよくわかんないんですよ。『何でこんなになっちゃったのかな』って」。管理職としての力不足を認めず、「わからない」と責任放棄してしまいました。

タガが外れたかのように話しはじめた塚原副会長を見た加藤さんは、誘い水を出すように語りはじめました。「塚原さんの言い分は、見解に相違があるんだと。われわれはしっかり喧々諤々しているし、“女帝”なんて言われるのは……」と話すと塚原副会長は「とんでもない」「おっしゃる通りです」と思わず合いの手。

さらに加藤さんが、「こういう騒動になってしまったことで、心労が大変だと思うんですけど」と声をかけると、「もうとっても大変です」と即答しました。これは「いたわる姿勢を見せることで本音を引き出す」という聞き手の誘導テクニックであり、「大変です」は組織のトップや管理職が自分で言ってはいけないフレーズです。

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