「震災時のデマ」が善意を元に広がるカラクリ 善意の行動が誰かの不利益招くリスクも
岡山県出身のお笑いコンビ「千鳥」のノブさんもニセ情報に振り回された一人だ。西日本豪雨を受けて7月11日、ノブさんは一般ユーザーの投稿を引用し、「岡山県のコンビニで救援物資を受け付けている」という内容のツイートを拡散。9000回以上リツイートされた。その結果、該当店舗にはたくさんの救援物資が運び込まれたが、実際は受付をしておらず対応に追われることに。
後に自身の過失を知ったノブさんは、「岡山県のコンビニの物資受付ツイートは地元の方の急遽の選択でのコンビニの許可なしの拡散でした。確認せずのリツイートしてしまい申し訳ありませんでした」と謝罪文を投稿したうえで、問題の投稿を削除した。
震災時に広まるニセ情報には、2種類ある。1つ目はノブさんのように誤解や伝聞により、間違った情報を広めてしまうパターンだ。
ノブさんの例以外だと、2018年6月に起きた最大震度6弱の大阪地震では、「京セラドーム大阪の屋根に亀裂が入っている」といううわさがツイッター上を駆け巡った。だが、実際亀裂などはなく、足場とはしごが遠目に亀裂のように見えるだけだった。また同時期、ツイッター上で「京阪電車が脱線している」といううわさも広まったが、そんな事実はなかった。当時のツイートをさかのぼると、「(電車が)脱線しそう」というツイートが伝聞されるうち、「脱線した」という内容に変わって広まったと思われる。
そして、もう1つのパターンは、愉快犯による悪意を含んだデマだ。2016年4月の熊本地震には「動物園からライオンが逃げた」というデマが、大阪地震では「大阪府北部でシマウマが脱走した」というデマがツイッター上で画像とともに広まった。もちろん投稿された画像は偽物である。ちなみにライオンのデマをツイートした男性は、2016年7月に偽計業務妨害(虚偽の風説を流布、または偽計を用いて、人の信用を毀損する罪)で逮捕されており、「悪ふざけでやった」と容疑を認めたという。
なぜ震災時にはこうしたニセ情報やデマが広まるのか。その理由について、アメリカの心理学者のゴードン・オルポートは、「流言(デマ)は、内容が重要であいまいなほど広がりやすい」としている。災害時、人々は不安で興奮しており、情報が不足した環境でつねに情報を欲している状態にある。このような心理状態がデマの拡散に拍車をかけるわけだ。
災害時のデマに振り回されないための情報収集術
災害時にはデマが広まりやすいことを認識し、情報の真偽を確認する癖をつけたい。SNS上で情報を得る場合は、その入手先を絞ったほうがいい。
たとえば、政府や自治体などがツイッターで発信している情報は、信頼性が高い。自分の住む地域の情報は、その自治体などの公式アカウントから得るといいだろう。
なお、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室の「災害対応におけるSNS活用に関する自治体web調査」(平成29年11月)によると、SNSを活用する自治体は54%ほど。ツイッターやフェイスブックを活用している例が多いようだ。
そして、もちろん個人が発した情報に関しては内容を鵜呑みにしないほうがいい。たとえツイッター上で広く話題になっていたとしても、発信者のアカウントのプロフィールや、前後の投稿も確認したい。発信者が有名人や専門家であったとしてもだ。
だが、いくら気をつけていても、うっかりデマを信じ、拡散してしまう可能性もある。もしあなたがデマを拡散してしまった、あるいは間違った情報を発信してしまったら、以下のことを実践してほしい。
ツイッターの場合は、問題のツイートを削除したうえで、訂正・謝罪ツイートをすること。フェイスブックの場合は投稿が編集できるため、訂正・謝罪の文言を付けた状態で、編集日時をつけ、編集するといいだろう。
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