星野リゾート新業態「OMO」が直面する試練 東京・大塚で都市観光のモデルをつくれるか

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街ガイドというと、希望する場所に案内してくれるのが一般的かもしれないが、「OMOレンジャーはお客様のご要望は一切、聞きません」と言い切る野部さん。では、どこに案内するのかといえば、「大塚に来たならこれだけは絶対に食べてほしい」「この店主にぜひ会ってほしい」とレンジャーが考える場所だという。案内する場所は、レンジャーや顧客によっても異なる。

野部さんが20代の女性グループを案内したときのことだ。普段はオシャレなレストランを利用するという彼女たちに、ぜひ体験してほしい場所があった。「かあちゃんち」という名前の居酒屋である。店内に入ると、遠慮のないかあちゃんの笑い声が響き、頼んでいないのに「これ食べなさい」と料理が運ばれてくる。最初はかあちゃんのパワーにタジタジだった女性たちも、いつの間にか店の雰囲気に溶け込み、かあちゃんや常連たちとの会話を楽しんでいた。「まるで実家に帰ったような居心地の良さ」と感想を漏らしていたという。

OMOの挑戦は始まったばかり

地域の伝統文化や特産品とコラボレーションし、その魅力を発信することでサービスの競争力を高めていくことは星野リゾートの得意領域だが、「ここまで地域に深く入り込んだ取り組みはグループでも初めて」と野部さんは話す。レンジャーとして案内した店が顧客には合わないこともあった。顧客を連れていったスナックで思ったほど盛り上がらず、野部さん自身が昭和歌謡曲をカラオケで歌ってその場を盛り上げた、などのハプニングもたまには起きるというが、それも顧客には大塚の思い出として記憶に残るだろう。

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大塚の街と宿泊客をつなぐOMOレンジャーのサービスは顧客にも好評で、利用者の6割以上が「大変満足」と答えているという。「今後はリピーターのお客様にも満足していただけるように、季節ごとの魅力を打ち出すなどサービスを進化させていきたい」と野部さんは意欲を見せる。

OMOは都市観光の新たな成功モデルになれるのか。その答えを出すのは時期尚早だ。星野代表はスタッフにこんな言葉をかけたという。

「OMOは星野リゾートとしても初めての試みだから、今は結果が出なくても、自分たちが時間をかけて考えたことをまずはやり切ってみて、そのうえで改善していけばいい」

OMOの挑戦は始まったばかり。日本を代表するリゾートホテルとしてさらなる進化を遂げるには、現場スタッフのやり抜く力が試されている。

前田 はるみ ライター

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まえだ はるみ / Harumi Maeda

ビジネス誌を中心に取材・執筆を行っており、丹念な取材力には定評がある。過去数十回にわたり、星野リゾートを取材しており、星野リゾートの組織文化をよく知る。

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