今週ご紹介する音盤は、アレサ・フランクリンの遺作『ブラン・ニュー・ミー(A BRAND NEW ME)』です。この音盤には、アレサ・フランクリンの代表作14曲が収録されています。
最大の聴きどころは、彼女の全盛期のソウルフルな歌唱とロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラによる管弦楽との時空を越えた競演が楽しめるところです。
同時に、彼女がクイーン・オブ・ソウル(ソウルの女王)にのぼり詰めることにつながるエッセンスが潜んでいます。そこには素晴らしい天賦の才と苦い挫折の味があるのです。
アレサにふさわしいオバマ夫妻の追悼文
アレサ・フランクリンが8月16日に膵臓癌で76年4カ月余の生涯を閉じて、早くも1カ月がたちます。ポール・マッカートニーはじめ多数の音楽関係者がアレサの業績を讃えるコメントを出しました。
のみならず、大統領就任式でアレサに歌ってもらったバラク・オバマ前大統領はミシェル夫人と連名で「アレサは私たちを、互いの絆をより深く感じさせ、より希望に満ちて、より人間らしくさせてくれた。ときには、すべてを忘れて、ただ踊るようにさせてくれた」とのメッセージを発出しました。アレサ・フランクリンの全人格を言い得て妙です。さらに、トランプ大統領までツイート。米国ではテレビ・ラジオで数多くの追悼プログラムが放送されました。
NASA(アメリカ航空宇宙局)は、アレサの訃報に接して、火星の外側を周る小惑星「249516アレサ」がクイーン・オブ・ソウル、アレサ・フランクリンにちなんで命名されていることにコメントしました。今さらながら、アレサ・フランクリンという歌手の存在の大きさが実感されたわけです。
このように世界中から愛され、これだけの業績を残したアレサ・フランクリンですが、彼女の成功は決して約束されていたわけではありません。
今回ご紹介する音盤がそれを示しています。この音盤はアレサのアトランティック・レコードへの移籍50周年記念盤です。が、この移籍がアレサの苦い挫折を物語っているのです。
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