窮地・スルガ銀、報告書が明らかにする「実態」 第三者委員会が今日公表、ポイントは?

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投資家が不動産を購入する際、正規の契約書とは別に水増し金額で書かれた契約書を不動産会社がでっち上げる。こうすれば購入額の9割までしか貸さないといった基準があっても、全額を融資できる仕組みだ。逆に最初に物件価格を水増しした契約を締結し、全額融資が実行された後で、正規の金額まで引き下げる手法もある。「スルガ銀行はこうした契約が通る銀行の代名詞だった」(都内の不動産業者)。

改ざんにどこまで加担していたか

だが、これまで二重売買契約はなかなか表面化しなかった。スルガ銀行で満額の融資を受けたという投資家もそれ以上の質問には口をつぐむ。二重売買契約は文書偽造の罪に当たる。不動産業者が勝手に偽の契約書を書き上げていたような場合は別だが、形のうえでは投資家が「悪質業者と一緒になってだました」と逆に銀行から言われかねないからだ。

二重売買契約や預金通帳残高の改ざんといった不動産会社が実行した不正に行員がどこまで加担したか、また役員関与の度合いや経営陣の責任を第三者委員会がどう認定するかが大きな焦点になる。

もしスキームの悪質性が強く、また銀行が深く関わったといった認定が第三者委員会でなされれば、「物件をスルガ銀行に返すので、残債はチャラにすべきた」と主張してきたオーナーやその被害弁護団からの責任追及がより強まるだろう。

シェアハウス以外の投資用不動産ローンについては、アパート・マンション経営自体は順調なケースが多いとみられている。手続きの不適切さは財務の悪化には直結しない。ただ、本来なら審査に通らなかった属性の低い借り手にまで融資を行った部分がどれだけあるのか、それに対する将来のリスクをどう評価するかといった問題は残る。

投資用不動産ローンに対してスルガ銀行では6月6日、3週間前に発表したばかりの2018年3月期の決算に急きょ訂正を施して、貸倒引当金として155億円を積み増した。監査法人との議論や4月から実施中の金融庁検査が影響したものとみられている。

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