営業から運用、調査と意外に広い保険の仕事【生保編】

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営業から運用、調査と意外に広い保険の仕事【生保編】

サブプライム問題に関しては、CDO(債務担保証券)やSIV(ストラクチャード・インベストメント・ビークル)などの関連投資が直撃した損保、金融市場の混乱であおりを食った生保という構図が描ける。

業績は生損保とも不振の極みともいえるが、だからといって、各社が成長のための人材を必要としていることに変わりはない。たとえば、損保各社は海外展開をますます志向しており、損保ジャパンなども海外に強い人材の育成を喫緊の課題としている。

主要生損保の2010年採用計画は8月時点の調査であり、未定との回答も目立つ。また今後、下方修正される可能性も高い。だが、損保は別として、現時点では生保は前年並みとする会社が多いことも事実だ。

では保険会社に入社した場合、10年後にはどのような仕事をしているのだろうか。

保険会社といえば、“営業”がまず頭に浮かぶかもしれないが、保険業界の職種は意外と幅広い。資産運用や保険金支払い部門、損保の損害調査部門など、言葉だけはイメージしにくい仕事も多いのではないだろうか。そこで、ここでは生保5社、損保4社の入社8~13年目の総合職社員に、現在、それぞれの部署でどのような仕事をしているかを聞いた。また、そこに至るまでのキャリアパスも、同時に掲載してある。

保険業界の場合、生保・損保ともに約10年で3~4種の職場を経験する。もっとも商品開発や保険金支払い部門のような専門的な知識が必要とされる部署は、おのずと異動も少なくなりがちだ。さらに一連の不払い問題で、生損保各社とも保険金支払い部門に力を入れたため、異動が例年より長引く傾向強くなっている場合もあるようだ。

アフラックの長野正裕氏は、マーケティング戦略企画部マーケティング企画課の副長。一般企業でいえば、課長補佐クラスといったところか。戦略企画部は、自分たちの保険商品をいかに消費者に届けるか、理解してもらうかを練る部署だ。そのため競合他社の状況や消費者の動向を調査し、いかにニーズを先取りするかに専心する。企画部門などに入ると、どうしても現場感覚を忘れがち。このため営業部門の人たちとのグループディスカッションも必須だ。またネット調査なども活用し、できるだけ情報を集る。こうして集めた情報をまとめ上げ、一つの「絵」にして社の上層部や代理店に向けて発信するのが重要な仕事だ。

長野氏のメインの仕事は、IR関連やアナリストミーティングの資料作り。四半期決算の開示時期が近づくと、原稿作成に夜中までかかることもざら。出社したら株価のチェック。IRを担当しているだけに欠かせない。

もう一つ。長野氏は現在、営業の人事評価を抜本的に見直す社内横断的なプロジェクトにも携わっている。営業社員800人のモチベーションを上げるための新たな目標設定を考え、キャリアパスを再構築している最中だプロジェクトには各部署のリーダー、サブリーダー級が参加する。

このようなプロジェクトは、各種、期間もさまざまなものが立ち上げられる。今回は次年度以降のアフラック全体の行方を決めるものだが、「1カ月で方向性を出す」方針で臨んでいる。忙しいメンバーゆえ「ランチミーティングじゃないと時間が合わない」ことも日常茶飯事。ただし、「ランチミーティングといっても弁当ですよ(笑)」(長野氏)。

「ルーチンな仕事はあまりない」(長野氏)にせよ、アリスの“赤の女王”ではないが、走り続けなければ、進歩は止まるということだ。

長野氏は入社12年目で、現在の部署が四つめ。入社直後は都内の大手都市銀行系列の上場企業や、1万人以上の規模の会社を顧客に持つ代理店=法人営業を担当。その後、宮崎支社に転勤となり、個人代理店=リテール営業を経験した。マーケティング戦略企画部に異動したのは、法人営業を教わった先輩の次の言葉から。「入社7、8年目で商品開発に携わったけど、視野が広がるよ」。営業一筋では視野が狭いままではないか。不安を断ち切るために、思い切ってジョブ・エントリー制度を利用して、05年にマーケティング戦略企画部の営業企画に異動した。

現在はパワーポイントも楽々こなす長野さんだが、営業企画に配属された当初は、マーケティングの専門用語がほとんどわからず、会議に出ても人の発言が理解できない。論理的思考もITリテラシーも営業現場ではほとんど必要なかった。「今までいかに勉強してこなかったかを痛感した」(長野氏)。社外のセミナーに出たり、本を読んで、やっとの思いで知識を詰め込んだ。「異動になって最初の1年間は厳しかった」と振り返る。

マーケティング部門で、ある程度経験を積んだら、再び営業に戻りたいと長野さんは語る。「今の知識があれば、現場でもっと違う提案ができる」(長野さん)。新天地での経験は、営業マンとしての自信につながったようだ。

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