営業から運用、調査と意外に広い保険の仕事【生保編】
女性誌から販売現場まで 開発マンの知られざる日常
生命保険にかぎらず、産みの苦しみは何事であれ厳しいもの。それが成熟市場で、飽和状態に近い生命保険ではなおさらかもしれない。住友生命の内海信氏は、商品部商品開発室に配属されて丸10年。新人研修を兼ねた支社配属の4年間を除き、同一部署に10年というのは、総合職では珍しいほうだ。役職は調査役。課長補佐クラスの筆頭スタッフという位置づけだ。大学の専攻は理学部数学科。
開発はいつも「一人で悶々とする」ことから始まる。医療・介護という大きな枠にとらわれず、あらゆる新聞や雑誌に目を通す。女性誌だって読む。情報を集め、机上で何が世の中に求められているのか考え悩む。それが“開発マン”の基本動作だ。しかし往々にして、最大のヒントは“現場”にある。定期的に支社に赴き、商品説明をするのは、営業社員から商品に対する不満やお客様からの要望、改善点を聞くことで道が開けることが多いからだ。
とにかくコンセプト作りには時間がかかる。着想から世に出るまで5年かかった商品もある。コンセプトがきたら、まず社内のスタッフレベルの全体会議に諮る。それを通過すると、部・課長クラスを集めた会議で社内プレゼンを行い、最終的に役員会で承認され、商品開発のゴーサインが出る。だが、スタッフレベルの会議でつぶれていく商品もゴマンとある。そこを通過しても役員会で内容が大きく変わることもある。
開発の指揮をとるのは“言いだしっぺ”。2~3人でチームを組み実務に取り掛かる。スタッフレベル会議での発表から、実際に商品が発売されるまで最短でも1年間はかかるのだが、この間の工程・進捗管理が開発主担当者の仕事になる。期間中はとにかく忙しい。大半はデスクワークだが、この時期は大阪にあるシステム開発部門との折衝のため出張も多い。資料集めに国会図書館にも足しげく通う。営業向けの教育用資料を作ったりと、目が回る忙しさだ。
やりがいを感じる瞬間は、「開発した商品で支払いができたとき」と内海氏は言う。保険金の支払いをすることは、お客様にとっては深刻な状況。しかし、苦労して生み出した商品が役立ったと実感できる瞬間でもある。
10年間で三つの商品を世に送り出し、ある程度の達成感を感じている。今後はより現場に近い部門への異動を希望している「ずっと本社にいると、お客様の顔を忘れてしまいがちになる」(内海氏)。販売現場により近い部門で、商品がどのように売られているのか、息遣いを感じたいと、次の段階へ進める日を心待ちにしている。