北朝鮮は「ソビエト」最後の日々をどう見たか ゴルバチョフと北朝鮮の指導者の違いは?

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北朝鮮の経済にとって、ソ連の崩壊は壊滅的なインパクトを持っていた。ロシア外務省の資料によると、当時のロシア政府のスタンスは「北朝鮮との友好関係は今後とも維持するつもりだが、こちらからの支援は期待しないでもらいたい」というものだった(このような基本方針は現在も変わっていない)。

北朝鮮経済は海外からの援助に激しく依存していたが、中国にも北朝鮮に支援を申し出る意思はなかった。ソ連の消滅によって北朝鮮も連鎖的に崩壊する可能性があったということだ。金日成氏が1994年に死去する前の時点で、すでに大飢饉の予兆も出始めていた。

北朝鮮には天才的な指導者がいるから大丈夫?

だが、北朝鮮は経済の枠をも超えた、さらに複雑な問題を抱え込むことになる。北朝鮮指導部の国家理論によれば、社会主義は「腐敗した資本主義」とは比べものにならないほど優れたシステムということになっている。だとすれば、なぜ世界最強の社会主義国であるはずのソ連が自滅したのか。あのソ連が崩壊したのに、北朝鮮が崩壊せずにすむなどということがありえるのだろうか。北朝鮮は国家イデオロギーの根幹にかかわる大問題に直面することになったのだ。

これに対する北朝鮮の答えは、こうだった。「わが将軍様は世界一偉大な人物である」「最高指導者にさらなる忠誠を誓うべし」。この答えは、現在でもほぼすべての問題に適用されている。

北朝鮮はつまり、「ゴルバチョフというとんでもない指導者のせいでソ連は崩壊した」というロジックを採用したのだ。北朝鮮は1980年代にソ連と友好的な関係を築き、実権を握っていた頃のゴルバチョフ氏に対しては金日成氏も称賛を惜しまなかった。にもかかわらず、北朝鮮内の歴史研究では、ゴルバチョフ氏は悪党の一人に数えられることになった。

北朝鮮が崩壊することはない。北朝鮮指導部は、そう宣言した。なぜなら、われわれには天才的な指導者がいるからだ、と。

このような北朝鮮政府の主張が興味深いのは、現実が大体このとおりになっているからだ。北朝鮮は事実、崩壊しなかった。そして、その大きな要因は金一族が改革を拒んだことにあった。

金一族は実際、ある意味では天才的な指導者だったのだ。これが「自らの地位を守ることにかけては」という意味であることは、むろん言うまでもない。

(文:フィヨドール・テルティツキー)

筆者のフィヨドール・テルティツキー氏は「NK Pro」(北朝鮮ニュース有料版)のニュースアナリスト。韓国ソウル大学で社会学博士号。
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