「お酒は少量なら健康に良い」はウソだった? 「海外一流誌」の最新論文をどう読むか

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この論文に掲載された図では、1日1杯ではほとんどリスクが上昇しておらず、1日1杯以上になると飲酒量が増えるに従い、病気になるリスクが上昇しているように見える。

注:アルコール摂取量とアルコール関連の病気になるリスクの関係。横軸に飲酒量(1杯=純アルコール換算で10g)、縦軸にあらゆる病気になる相対リスク(動脈硬化もがんも合わせて重みづけ平均を取ったもの)を表している。なお、正確には、障害調整生存率(DALY)という指標を用いて評価している。DALYとは、疾病や危険因子に起因する死亡と障害に対する負荷を比較できる形で、健康への影響を総合的に定量化するための指標である。 出典:GBD 2016 Alcohol Collaborators[2018].

ちなみにここでの1杯とは、純アルコール換算で10gのことを指す。10gの純アルコールはグラス1杯のワインやビールに相当する。

最後は自分自身のリスク要因で決める

論文によると、健康リスクを最小化する飲酒量に関して、最も信頼できる値は1日0杯であり、95%の確率で0~0.8杯/日の間に収まるという結果であった。この結果を受けて「最も健康に良い飲酒量はゼロである」と主張している人も多いが、筆者は個人的には「1日1杯までであればリスクは上昇しない」と解釈してもいいのではないかと思っている。

病気ごとで見てみると、心筋梗塞に関しては、少量の飲酒をしている人ほどリスクが低く(男性では0.83杯/日、女性では0.92杯/日の飲酒している人で最もリスクが低かった)、ある程度以上になるとリスクが高くなるのがわかる。一方で、女性のデータを見ると乳がんや結核は、少量からリスクが上昇しているのがわかる。男性のデータもほぼ同じパターンであった(男性の場合は乳がんの代わりに口腔がんのリスク上昇が認められた)。

注:アルコール摂取量とそれぞれの病気になるリスクの関係(女性のデータ)。横軸に飲酒量(1杯=純アルコール換算で10g)、縦軸にそれぞれの病気(左上→乳がん、右上→心筋梗塞、左下→糖尿病、右下→結核)になる相対リスク(正確には障害調整生存率)を表している。 出典:GBD 2016 Alcohol Collaborators[2018].

つまり、1日1杯程度の少量のアルコールの場合、心筋梗塞や糖尿病のリスクが低いことと、乳がんや結核(そしてアルコールに関連した交通事故や外傷)のリスクが高いことが打ち消しあって、病気のリスクは変わらないという結果になっていると考えられる。

この結果を見て、私たちはどのように生活習慣を変えればいいだろうか?

第一に、好きでもないのに健康に良いからという理由でアルコールを少量飲んでいる人は止めたほうがいいだろう。健康へのメリットは思われているほどはっきりしたものではないし、がんやケガのリスクを高めてしまう可能性がある。

ではアルコールが好きで飲んでいる人(ほとんどの人はこちらだろう)はどうしたらいいだろうか。自分自身のリスクなどを総合的に判断して決めるべきだろう。近い親族にがんになってしまった人がいる遺伝的にがんのリスクの高い人は、アルコールの摂取量を最低限に抑えることをおすすめする。過去にアルコール関連で事故やケガをしてしまった人も控えた方がよいだろう(ランセットの論文で少量の飲酒でも病気のリスクが上がる原因は、がんだけでなく飲酒に伴う事故やケガも含まれていたため)。

もちろんアルコールを飲むことで人生が豊かになり、生活の質が上がるという人もいるだろう。人間は病気にならないためだけに生きているわけではないので、そのような人は適量、つまり1日1~2杯までに抑えてたしなむことがいいと筆者は考える。

津川 友介 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)准教授

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つがわ ゆうすけ / Yusuke Tsugawa

東北大学医学部卒、ハーバード大学で修士号(MPH)および博士号(PhD)を取得。聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード大学勤務を経て、2017年から現職。著書に『週刊ダイヤモンド』2017年「ベスト経済書」第1位に選ばれた『「原因と結果」の経済学』(中室牧子氏と共著、ダイヤモンド社)、『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)。ブログ「医療政策学×医療経済学」で医療に関する最新情報を発信している。

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