トルコリラ暴落後の「大惨事」はありえるのか 危険を知らせる市場のカナリアかもしれない

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ちなみに、先進国の中では債券発行の基準が緩い「円建て債券=サムライ債」も、バブルと言っていいだろう。日本円や日本の債券市場全体がバブルともいえるが、新興国企業などが発行する円建て債券もまたリスクと言っていい。日本人投資家が大量に買っていないことを祈るばかりだ。

米国株式市場

リーマンショック後の株価上昇に加えて、グーグルやアップル、アマゾン、フェイスブックといったハイテク産業が世界規模レベルで成功し、ハイテク産業が株式市場をリード。そこに、トランプ大統領が掲げた大型減税、10年で1兆ドルのインフラ整備などが重なって、米国株の高騰が続いている。米国株式市場の「強気相場」が10年に近づいていることを考えても、アメリカの株式市場はバブルと言っていいだろう。

さらに、FRBの政策金利引上げによって、米国企業の社債の利回りから米国国債の利回りを引いた「クレジットスプレッド」の値が拡大しており、株式市場は適温相場を終えて米国株式市場が調整局面に入るのも時間の問題と言っていい。

米国不動産市場

アメリカの不動産市場も、リーマンショック以前のレベルに戻っており、現在では逆に中古住宅価格が2年5カ月ぶりの低水準となって販売が伸び悩んでいる。大型減税で庶民の懐は潤っているものの、住宅を購入するほどの景気のよさは回復していない。アメリカの景気が完全復活したと考えるのは早計なのかもしれない。

不動産市場は、最もバブルに陥りやすいマーケットだ。ひょっとしたら、ポピュリズム政権のトランプ大統領でなければ、アメリカの不動産バブルはすでに破裂していたのかもしれない。不動産に限らず、バブルは破裂するのが遅くなればなるほど深刻な被害をもたらす。

加えて、ここに来てアメリカの不動産価格を支えてきた中国人投資家が一斉に米国市場から資金を引き揚げ始めたといううわさもある。不動産価格を示す指標として知られる「S&Pケース・シラー住宅価格指数」の発案者の1人であるエール大学のロバート・シラー教授も「アメリカの不動産市場は転換点の初期段階に入った」と語っている。

新興国株式市場

今回のトルコショックでも新興国の株式は売られたが、株式市場は先を読むマーケットであり、トルコの株式市場などが大きく売られれば、連鎖して新興国の株式市場なども売られる。今回のトルコショックでは、いずれも最大で13%程度の下落で済んでいるが、今後はどうなるかわからない。

新興国株式市場の指標である「MSCI新興国株式」も、今年1月以降、下落率20%に達して「弱気相場」に入った。

トルコリラ市場の暴落でわかるように、ドル建て債務の拡大によってトルコ経済の不安定化がクローズアップされて、そこにトランプ大統領の「Twitter砲」で悪材料を提供すれば、リラ市場はまたいつでも不安定化する。

ほかの新興国通貨でも簡単に通貨危機が起こりうる

通貨が必要以上に売られれば、ヘッジファンドなどに狙われて規模の小さな新興国通貨は簡単に大きなボラティリティ(変動幅)を演出させられる。トルコリラに限らず、ブラジルやチリ、アルゼンチン、南アフリカといったほかの新興国通貨でも簡単に通貨危機が起こりうるということだ。ロシアや中国だって例外ではないかもしれない。

そういう意味では、今後はあらゆる新興国通貨が要注目かもしれない。とりわけ、ドル建て起債が多く、外貨準備高の少ない新興国は狙われる。外貨準備の少ない国というのは、言い換えればいつ債務不履行(デフォルト)を起こしても不思議ではない。そういう国は狙われるということだ。

岩崎 博充 経済ジャーナリスト

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いわさき ひろみつ / Hiromitsu Iwasaki

雑誌編集者等を経て1982年に独立し、経済、金融などのジャンルに特化したフリーのライター集団「ライトルーム」を設立。雑誌、新聞、単行本などで執筆活動を行うほか、テレビ、ラジオ等のコメンテーターとしても活動している。『老後破綻 改訂版』(廣済堂出版)、『日本人が知らなかったリスクマネー入門』(翔泳社)、『「老後」プアから身をかわす 50歳でも間に合う女の老後サバイバルマネープラン! 』(主婦の友インフォス情報社)など著書多数。
 

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