どうしてそこまで習い事熱が高まるのか。わが家の場合は、私が育休中の1歳前後でスイミングに連れて行ったものの、さんざん泣かれて数カ月で通うのを断念。以来、まぁそこまでしてやらなくてもいいんじゃない、と思っていた。……ほぼ専業主婦生活になるまでは。
シンガポールに来て子どもを幼稚園に通わせ始め、ようやくなぜこんなに習い事率が高いのかよくわかった気がする。要は、幼稚園児はヒマなのだ。平日は幼稚園から15時ごろに帰ってきて、夕飯を食べて寝るまで数時間ある。もてあますとグズグズし出して、手に負えない。親としては肉体的にも精神的にも、毎日毎日相手をしきれないから、習い事でもなんでも予定を入れて「やること」を作る。これが大方の「習い事でびっしり埋まった平日」の裏の理由なのではないか。
いや、もちろん、1つひとつの習い事をさせたい理由を正面切って聞けば、ちゃんとした深い理由もあるだろう。子どもの才能を開花させたい、個性を伸ばしたい、コツコツ規則的に練習をする習慣をつけたい、自己肯定感を持ってほしい、学校がはじまってからついていけないと困る……。中には本当に習い事に熱心に取り組んで、その道に進むお子さんだっているだろう。
でも、多くは「友達がやっているから」「自分も小さい頃やっていたから」が主たる理由であり、自分たちも小さい頃は結局「気力、体力をもてあまして微妙だった」なんじゃないか。そう邪推してしまう。
現に、筆者が3~6歳の子をもつ母親たちに子育て意識の調査をした際、会話の端々にかなりの確率で出てきたのが、子どもに「体力を使ってほしい」という声だった。
多くの母親が口にする「保育園には園庭があるほうがいい」「体操教室に通わせたい」「公園で遊ばせたい」という声。そこには、身体の発達によさそうだからなどという理由ももちろんあるのだが、それよりも高頻度で出てくるのが「家に帰ってからも体力をもてあましていて困る」という本音。つまり、ママたちは子どもたちに疲れ切って早く寝てほしいだけなんじゃないか!?
専業世帯を見て焦る、共働きの親たち
しかし、昨今の習い事熱の高さは、子どもが幼稚園から早く帰ってくる、専業主婦家庭の現象にとどまらない。専業主婦家庭を中心に周囲の家庭が習い事をしはじめる年齢になると、子どもが“ヒマをもてあましている”わけではないはずの共働き家庭まで焦りはじめるきらいがある。
必ずしも習い事に通わせることが「十全な育児」とは言えないと思うが、共働き家庭からは「自分も子どもの頃やらせてもらっていたことをわが子にもやらせてあげたい」「専業主婦みたいな丁寧な子育てが自分にはできていないのでは」といった不安の声が上がる。
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