「騒音を訴えただけで禁固18カ月」という悲劇 インドネシア「宗教的寛容」の実相とは?
8月21日、インドネシア・スマトラ島北スマトラ州の州都メダンにある地方裁判所が仏教徒の中国系インドネシア人女性に対し、「禁固18カ月」の実刑判決を言い渡したことが、現地で大きな話題になっている。
実刑判決を食らったのは、44歳のメイリアーナさん。この女性は「モスクの音声がうるさい」と苦情を訴えていたのだが、これが「イスラム教を冒瀆(ぼうとく)した」として刑法の宗教冒瀆罪違反に問われたのである。
即時釈放を求めて10万人以上が署名
「騒音被害」を訴えただけの市民に対する予想外の重い判決に対して保守系のイスラム教組織を含めた各種人権団体や政府関係者からは「重すぎる判決」「言論の自由に反する」「条文の解釈が恣意的だ」などと一斉に不満が噴出、インターネットのサイトでは被告女性の即時釈放を求める署名活動が始まりすでに10万人が署名する事態になっている。
インドネシアは世界最大のイスラム教徒人口を擁する国だが、イスラム教は「国教」ではなく、キリスト教、仏教、ヒンズー教なども認めている。多様な文化、言語、宗教、民族が共存するために、「多様性の中の統一」を国是として掲げている。
その際に重要となるのが「寛容」で、現在のジョコ・ウィドド大統領も機会がある度に国民に「寛容精神の涵養」を強調している。
ところが人口の88%を占める圧倒的多数派のイスラム教徒による主張や要求が優先されて宗教的少数派の国民に「忍耐」を強い、時に「差別」の対象とするケースが往々にしてある。今回の仏教徒女性に対する判決もその一例といえる。
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