日本の戸建住宅を襲う「ガラパゴス化」の懸念 規格バラバラ「プレハブ住宅」のシェアが低下

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

もともと木造住宅は、プレハブ住宅に比べて価格競争力で勝っていた。工業化・IT化が進むことで、品質・性能、デザイン面でも競争力が高まれば、じわじわとプレハブ住宅のシェアを侵食する可能性もある。プレハブ住宅メーカーが木造住宅分野に参入し始めた背景にはそうした強い危機感があるのだろう。

オープン工法とクローズド工法

戸建住宅の建て方には、大きく3つの工法がある。「木造軸組・在来工法」「ツーバイフォー(2×4)工法」「プレハブ工法」の3種類で、消費者が住宅を購入するときに必要な基礎知識なので、ご存じの方は多いだろう。

木造在来は、「木造軸組工法」とも呼ばれ、工務店の多くが手掛けている日本ではおなじみの建て方だ。北米などで最もポピュラーな木造住宅の建て方がツーバイフォーで、2×4インチ(実際の規格寸法は38ミリ×89ミリ)や2×6インチの角材を使用する。1974年に日本でも標準的な工法として認可され、三井ホーム、東急ホームのほかに、賃貸住宅の大東建託なども採用。木造在来とツーバイフォーは、国土交通省が定めた「技術基準」が公開され、建設会社ならどこでも対応可能な「オープン工法」だ。

一方、1959年に大和ハウス工業が初めて商品化したプレハブ住宅は、各メーカーが独自に開発した工法で、開発元しか対応できない「クローズド工法」である。プレハブ工法には、積水ハウス、大和ハウス工業、旭化成ホームズ、パナソニックホームズなどが採用する鉄骨系、ミサワホームの木質系、積水化学工業(セキスイハイム)のユニット系、コンクリート系の4種類があり、同じ鉄骨系でもメーカーによって部材や建て方はバラバラだ。

戦後の住宅政策は、品質・性能の向上と低コスト化を図るため、住宅生産の工業化を積極的に推進してきた。それによって製造業や素材業からも住宅産業に参入する大手企業が相次ぎ、将来的には自動車や家電製品などと同様に大手メーカーによる市場の寡占化が進むと予想されていたが、結果はそうならなかった。

国交省の建築着工統計をみると、新設住宅全体に占めるプレハブのシェアは、1992年度の17.8%をピークに伸び悩み、その後も15~16%で横ばい状態が続いている。2017年度には15%を割り込んで14.4%に低下し、今年度の第1四半期(4~6月)には12.9%まで落ち込んだ。2000年代前半にも12%台まで低下したことがあったが、それ以来の落ち込みである。

一方、木造住宅のシェアは、2008年度までは40%台半ばで推移していたが、リーマンショックの影響でマンションなどの着工が大きく落ち込んだ2009年度に50%を突破。その後も50%台半ばで推移し、2017年度は57.3%まで高まっている。北米から導入したツーバイフォー工法が木造住宅に占める比率も、1990年代前半までは10%以下だったが、2008年度には20%を超えて、この10年間は22%前後で推移している状況だ。

直近の統計数字を見るかぎり、「オープン工法」の木造住宅のシェアが高まる一方で、「クローズド工法」のプレハブ住宅が苦戦を強いられている構図が浮かび上がってくる。かつてデジタル革命の進展で、コンピュータや携帯電話などの市場では、日本だけで進化してきた「ガラパゴス」製品が淘汰された歴史がある。住宅市場においても「クローズド工法」のプレハブ住宅が「ガラパゴス化」してしまう懸念はないのか。今後、市場縮小が予測されるなかで、注意深く見ていく必要がある。

千葉 利宏 ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ちば・としひろ / Toshihiro Chiba

1958年北海道札幌市生まれ。新聞社を経て2001年からフリー。日本不動産ジャーナリスト会議代表幹事。著書に『実家のたたみ方』(翔泳社)など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事