日本の戸建住宅を襲う「ガラパゴス化」の懸念 規格バラバラ「プレハブ住宅」のシェアが低下

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分譲戸建住宅市場で約3割の圧倒的シェアを持つ飯田グループホールディングス(以降、飯田GHD)も、好調に販売棟数を伸ばしている。住宅産業研究所のブランド別調査ではグループ6社が個別計上されているのでトップになっていないが、一建設、飯田産業、アーネストワンなどグループ6社合計の分譲戸建の販売棟数は、2018年3月期で前期比8.7%増の4万4275棟(土地売り含む)と断トツだ。

2013年11月に経営統合したあと、国内最大級に集成材製造・プレカット会社のファーストウッド(福井県)を2014年に子会社化した。今年3月には青森県に単板積層材(LVL)の新工場を建設するなど、木造在来工法の部材生産能力を着々と強化。今年度の分譲戸建の販売目標は4万8000棟以上で、注文住宅を加えると年間5万棟を突破する可能性もある。

木造在来工法の注文住宅を得意とするタマホームも、2期連続で受注を伸ばした。九州を地盤に急成長し、2013年に東証一部に上場したあと業績が落ち込んだ時期もあったが、ベーシックラインと呼ぶ低価格住宅の投入で復活。2018年5月期の受注棟数は前期比5.7%増の9386棟と、3位グループに浮上してきた。一時期のような派手なTVコマーシャルは見掛けなくなったが、地域ごとにきめ細かく顧客ニーズに対応して受注拡大につなげている。

変化する戸建住宅の業界地図

戸建住宅市場は、1970~1980年代から積水ハウス、大和ハウス工業、ミサワホーム、旭化成ホームズなどプレハブ住宅を得意とする大手ハウスメーカーが業界をリードしてきた。住宅関係10団体を統合して1992年に発足した住宅生産団体連合会(住団連)に加盟する企業会員27社には、大手ハウスメーカーのほか、LIXIL、TOTO、大成建設などの名前が並ぶ。

その戸建住宅の業界地図に明らかに変化が現れている。2017年1月にトヨタホームがミサワホームを、10月にパナソニックがパナホーム(現・パナソニックホームズ)を子会社化し、今年8月には三井不動産が三井ホームの株式公開買い付け実施を公表。大手ハウスメーカーで企業再編が進行し始めている。

一方で、2000年代以降に勢力を伸ばしてきた一条工務店、飯田GHD、タマホーム、賃貸住宅最大手となった大東建託は、いずれも木造住宅メーカーである。4社とも住団連の企業会員には加盟しておらず、いまだにアウトサイダー的な存在だが、大手をしのぐ販売実績を上げるようになった。

戦後、プレハブ住宅が登場する前に殖産住宅相互や太平住宅などの大手木造住宅メーカーが活躍した時代があった。しかし、その後は淘汰され、木材供給会社でもある住友林業くらいしか残らなかった。

木造住宅は、中小工務店が多く手掛けており、プレハブ住宅に比べて工業化・IT化が大幅に遅れていた。プレハブ住宅メーカーのように、生産性や品質・性能の向上のために巨額の設備投資を行うような企業がなかなか出現しなかった。ようやく2000年代に入って木造住宅でも工業化・IT化が進みだし、一条工務店や飯田GHDのように生産体制を整える企業が登場してきた。

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