関東進出!食べ放題焼肉「ワンカルビ」の正体 関西・九州の名物チェーン、強さの秘密とは?
――それぞれの狙いはどのようなものですか。
原点回帰とは、「肉屋さんだからこそできる焼肉店」ということ。すなわち、それまでの冷凍肉ではなく、チルドの肉を店内で手切りをして、鮮度のあるおいしい肉をお客さまにお出しするということです。
しかしながら、当時は肉のカットをアウトソーシングしていましたから、外食部門の社員は肉をカットできませんでした。そこで小売部門の人材を外食に転籍させて、1年近くかけて外食部門の全社員に肉のカット技術や知識を教えて回りました。
店内カットをするためには人材育成に時間がかかりますし、作業でも手間暇が必要なため人件費がかかります。しかし、この非効率こそが、他店がまねできない魅力的な焼肉店をつくることにつながるものと思いました。
“ファイナルウェポン”は「食べ放題」
もう1つの食べ放題について。当時は債務超過になっていましたから、失敗することは許されません。そこで“ファイナルウェポン”に位置付けた食べ放題への業態変更を決断しました。
ただし、一般の食べ放題ですと、食材のコーナーがあってそこにお客さまが取りにいくというものです。これですと効率がよく人件費を抑えられます。しかしながら、われわれはそのような提供方法ではなくテーブルオーダーバイキングを選択したのです。
なぜならば、家族で、あるいは親しい仲間と食事に来ていて、その都度、食材を取りに行くとなるとそこでコミュニケーションが途絶えてしまうのです。
そうではなく席に座ったまま団らんの時間を過ごしてもらうために、われわれはお客さまからオーダーされた食材や料理をお客さまのテーブルにお持ちすることにしたのです。
これにはリスクもメリットもあります。人件費がかかることはもちろん、『サービスは掛け算』といいますが、お客さまが店のサービスにゼロやマイナスを感じることがあれば、店の印象は台無しになります。ですから、サービスレベルを上げなければいけない。しかも、テーブルオーダーバイキングはお客さまにわれわれが接する頻度が非常に高い。ですからレベルの低い接客をすると大きなマイナスになりますが、きちんとした接客をすると大きなプラスの印象を抱いていただくことができる。
このように接客サービスを徹底すると時間もコストもかかります。肉を手切りすることと同様に非効率になります。しかしながら、先ほど申し上げたように、この非効率こそ独自価値につながります。ダイリキの強みを生かして、他社・他店との差別化を図ることでお客さまからの信頼を得ようと考えました。