貧困女性が「世帯収入1000万円」を叶えた理由 生活保護費で1円パチンコを打つ日々だった

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ギャンブルが原因の夫の借金に気づいたのは、結婚して1年くらい経ってからだった。消費者金融に200万円近い借金があって、自分の貯金をはたいて夫の借金を清算した。それでもギャンブル癖は治らなくて、自分の給与は全部使ってしまうような状態だった。

「前の旦那は結局、会社のお金の横領までやってしまった。お客さんから預かったお金をギャンブルとお酒に使っちゃって、会社の経理への書類で誤魔化していたけどバレてしまった。当然、懲戒解雇で無職です。それから私が無職の夫の面倒をみたけど、それでもギャンブルもお酒もやめないし、嫌気がさして離婚して会社も辞めちゃった。それが生活保護になる、ちょっと前ですね」

苦しくなったら自分だけで背負うことはない

女性はどうしても配偶者によって人生が左右される。最底辺に転落したのは前夫のダラしない性格に嫌気がさした離婚がキッカケで、最底辺から抜けだして上位の階層に身を置く現在になる始まりは再婚だった。

「今の夫は風俗の客だった。医療関係者で奥さんと死別した人で、雰囲気がタイプだったからいいかなって。何度か一緒にご飯を食べに行って、結婚しようかってなった。婚姻届けを出しに行く日に、生活保護の担当者に『結婚するんですけど、今月生活保護費もらえますか?』って聞きに行ったら、出すわけないだろうって断られた。じゃあ、就職しなきゃって堕落した生活に見切りをつけた。中小企業だけど、会社はすぐに見つかった」

5万4000円の小さな部屋から、夫と子どもたちが住んでいるマンションに引っ越した。再婚した夫の子どもたちと、家族みたいな雰囲気になるまでに1年間くらいかかった。気づけば、この半年は血のつながっていない子どもの進学のことで頭がいっぱいになっている。

「なんかみっともない話をしちゃったけど、苦しくなったら自分だけで背負うことないし、制度を使ったほうがいいよね。生活保護は楽なので本当にダメ人間になるけど、餓死とかで死んじゃうより全然幸せだから。あと再婚も、そう。貧困になっちゃったら、もう捨てるものなんてなにもないんだから、相手が現れたときは迷ってないで一緒になったほうがいいよ」

吉村さんは最底辺から抜けだして、世帯収入1000万円の母親となった。どんな状況に陥っても頼れるセーフティネットは頼り、あきらめないで動くこと。どんな状況に陥っても、苦境から抜けだすチャンスはいくらでもあることを伝えたかったようだ。

中村 淳彦 ノンフィクションライター

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なかむら あつひこ / Atsuhiko Nakamura

貧困や介護、AV女優や風俗など、社会問題をフィールドワークに取材・執筆を続けるノンフィクションライター。現実を可視化するために、貧困、虐待、精神疾患、借金、自傷、人身売買など、さまざまな過酷な話に、ひたすら耳を傾け続けてつづけている。著書に『東京貧困女子。』(東洋経済新報社)、『崩壊する介護現場』(ベストセラーズ)、『日本の風俗嬢』(新潮社)、『名前のない女たち』シリーズ(宝島社)など多数。Twitterアカウント「@atu_nakamura」

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