18歳「ロヒンギャ花嫁」と難民キャンプの今

バングラ大量流入1年、帰還の見通しなく

ミャンマー政府がアリバイ的に設置した帰還者の一時滞在施設は、難民たちの間では「一度入ったら二度と出られない強制収容所。そこで殺されてしまうかもしれない」と認識されている。多数の同胞を虐殺され、着の身着のまま逃げてきたのだから当然だろう。

こう着状態打開のカギを握るのが日本である。河野太郎外相は8月6日、ミャンマーの首都ネピドーでアウンサンスーチー国家顧問と会談し、難民の早期帰還に向けた協力を確認するとともに、ラカイン州の電力・送電網整備や小学校建設などインフラ支援を進める方針を表明した。

ミャンマー政府に「変化」の兆しも

河野外相は国境を挟んで両側の現場に立った数少ない外国要人である。昨年11月にコックスバザールの難民キャンプを訪問し、年明け1月のスーチー氏との初会談の翌日には焦点のラカイン州を視察しており、この点だけでも日本は非常に面白い立ち位置にある。

ミャンマー、バングラデシュ両国は、政府開発援助(ODA)などを通じて日本と関係が深い親日国である。とりわけ歴史的つながりがあるミャンマーに対しては、日本は軍事政権時代も欧米の人権外交と一線を画し、政府軍首脳とスーチー陣営の双方と付き合う独自路線をとった。

ロヒンギャ問題でも非難一辺倒でミャンマーを意固地にさせるのではなく、長年の信頼関係を生かして、国際社会との仲介役を担おうとしている。ロヒンギャなる民族の存在自体認めていないミャンマー政府に配慮して、その呼称を使わず、国連で昨年11月と12月に採択されたミャンマー非難決議も棄権。今年3月にはスーチー氏と親しい外務省きってのミャンマー通、丸山市郎氏を大使に起用し、水面下での働きかけを続けた。

日本をはじめ多くの国々がロヒンギャ難民支援に参画する(筆者撮影)

ここにきて変化の兆しもみえる。ミャンマー政府は6月6日、難民帰還に向けて国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連開発計画(UNDP)と覚書を締結し、立ち入りを拒んでいたラカイン州北部での国連職員の活動を認めた。7月30日には第三者的立場でロヒンギャ弾圧の経緯を調べる独立調査団を設置し、大島賢三・元国連大使、ロサリオ・マナロ元フィリピン外務副大臣の外国人2人を含む委員4人を任命した。

実効性がわからないとはいえ、かなり踏み込んだ譲歩である。スーチー氏は昨年来、「ノーベル平和賞受賞の民主化指導者なのに何もできないのか」という批判にさらされてきたが、もともとロヒンギャ問題に無関心だったわけではない。ラカイン州の治安権限や経済権益を握る軍部との対立を覚悟して、国際社会に歩み寄ろうとしているのだろうか。

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